今年のベスト(小説)

ちなみに、「つまんなかった」作品には言及しないのがポリシー。日記に書いてあるのに、ここに載ってないのは「おもしろかったけど、年末に振り返るほどじゃない」奴であります。単に何読んだかの一覧なんて、日記一覧から「本」とか「ライトノベル」で検索すれば一覧化できるから、いらないでしょう。

小説全般

  • パーンの竜騎士シリーズ/アン=マキャフィリィ

年始ごろに読んでいた。アン=マキャフィリィの「歌う舟」があまりに甘口だったので、しばらく敬遠していたものの、古本屋で100円で売っていた一冊目を読んでみたら意外と面白くて、その後3冊続けて読み、同じ作者によるファンタジー小説まで買ってしまった。暗くて企むヒロインが好みだったのと、宇宙間隙の情景、竜による戦いのイメージ描写とかが好きだった。シリーズが進むにつれて、パワーダウンしていったので「白い竜」まで読んだところで中断中。

今年の傾向がライトノベルにはしるきっかけになったSF小説は、これと早川版「クレギオン」だと思う。地味のようで派手、派手のようで地味なストーリーが面白かった。逆に、「ロミオとロミオ」とかも期待はずれだったし、今年は日本のSF小説の出会いに恵まれなかった年だなあ、と嘆息してみる。山本弘の新作、とか「マルドゥク」に手を出してみればいいのか?。

ことし、最も時間をかけて読んだ小説。「ハイペリオン」「エンディミオン」は去年読んだ。4冊読むのに二ヶ月半はかかっている。パイペリオンの没落は、とにかく面白かった。ひたすら長い、という欠点があるものの、新奇な道具立てを導入せず、エンターテイメントに徹しつつも新しい見方を書くことができるんだ。という意味でも感動的だった。エンディミオンの方は、確かに面白かったけども、ハイペリオンに比べると少し落ちる。確かにちゃんと終わったけどさ。

2006年に読んだ恩田陸作品でのベスト。中年男女4人が、三日間ひたすら歩き回りながら、くっちゃべる話。だというのに、とても面白かった。恩田陸の小説は変なガジェットを導入しないほうが、むしろ面白くなるんじゃないだろうか。四人の内のひとり、蒔夫の性格設定が自分に似ていたことが没入度を高くしたと思う。あと、そういう「穏和なんだけど心優しくない男」というキャラクターを恩田陸が書くのをみたのははじめてだった。ただ、小説としての完成度はこれの後で読んだ「夜のピクニック」の方が高いと思う。

ライトノベル

今年はラノベの年だったなあ。
きっかけとしては、去年読んだ「サマー/タイム/トラベラー」からの流れで新城カズマの小説を探したらラノベばっかだったことと、「サーラ」の完結の噂を聞いて「サーラ」を読んだこと。「クレギオン」とかも読んでるうちに、ラノベを読むこと自体に感じていた抵抗感が減って、読みやすくなったことがある。
あと、仕事に余裕があったので、読んでなかった本を当てもなく探し回るだけの時間があったし。とげとげした内容の小説を読む心の余裕があったからではないか、と思う。

田中哲弥の文体に似ていた導入部分のせいで1冊目を買ってしまって、その後怒濤の勢いで読み、今年の後半に色濃く影響を受けることになったラノベ。2006年は「エルフェンリート」と「イリヤの空」、「夕凪の街、桜の国」という一年だったと振り返ってしまえる。唯一SSを書いちまったし。今年の後半は、「ハウルの動く城」を見ても、「パーフェクトワールド」を見ても、全部エピソードをイリヤに重ねて見えてしまった。アニメも前半まで見たけれど、アニメの出来はあんまり良くない。

今年がラノベ三昧になりはじめを作ったのは「サーラ」だった。これのおかげで本屋で「富士見ファンタジア」とか「電撃文庫」に手を伸ばすのに躊躇しなくなった。今年読んだのは短編「イオドの宝」から、完結まで。それで、十年前に「君を守りたい」とか読んだときに比べて面白かったか? と問われると、正直自分が年を取ってあれこれ読んだ後だけあって、「うーん」と首をひねる状態なんですが。少年時代の頃に読み始めたラノベが、みごとおっさんになった時に終わったという感慨はある。ただし、山本弘による長編シリーズの完結編としては、「妖魔夜行」の完結編の方が、アイデアと勢いがあって好きだ。気がつけば「百鬼夜翔」の新作を山本弘が書いているが、これは面白いんだろうか。

イリヤ」の殺伐さの合間に読んで、いやされたラノベ。「エルフェンリート」や「鋼鉄の少女たち」の合間に読んだ「ぱにぽに」と並んで癒された。時間を空けて、時々読みたい。というか、「ハルヒの憂鬱」は別にアニメでみりゃいいだろう、という気がするけど、キノの旅は本で読みたい。問題は、続けざまによむと飽きが来るところか。続けて読みやすい、っていう事でもあるけど。