失われた青春時代と女生徒会長をもとめて

めだかボックス 1 (ジャンプコミックス)

めだかボックス 1 (ジャンプコミックス)

ヤンキー君とメガネちゃん(23)<完> (講談社コミックス)

ヤンキー君とメガネちゃん(23)<完> (講談社コミックス)

めだかボックス』、5冊目まで読んだ。西尾維新って、前に一冊だけ読もうとして10頁ぐらいで挫折したので、読めてほっとしたけど……「妙にポジティブな女生徒会長に翻弄される生徒会役員たちと男主人公」っていう構図は、『ヤンキーくんとメガネちゃん』の方が面白かったなあ。

これは、なんかすぐにバトル漫画になっちゃったのが残念。マガジンが『ヤンキーラブコメ漫画』でジャンプが『学園バトル漫画』なのは、雑誌の特色なのか。

会長はメイド様! 12 (花とゆめCOMICS)

会長はメイド様! 12 (花とゆめCOMICS)

あとは『会長はメイド様!』だと今度は逆で『妙な男に翻弄される真面目な女生徒会長』という転倒が起きていて、少年漫画だと理解不能なのは生徒会長の方なのに、少女漫画だと男が理解できない妙な奴、というのは実に分かるんだけど、そうかー、という感じである。

どうでもいいが、三つ表紙をならべてみて全部「男:金髪、女:黒髪」なのはすごいなあ。

ハヤテのごとく! 27 (少年サンデーコミックス)

ハヤテのごとく! 27 (少年サンデーコミックス)

これがサンデーで普通に『ハヤテのごとく!』を割り当てるとすると、なぜか少年漫画なのに恋愛感情の方向性が『女子→男子』であり、どっちかてえと『会長はメイド様!』と近い構図なのが面白い、というか男のくせに女子側に感情移入するのがサンデー読者層ということかというと、そうではなくて「恋愛している本人に感情移入しているのが他の漫画だとすると、恋愛している対象を客観視して神の視点から他人の恋愛を眺めるのがサンデー読者層」という気もしないではない。
この「キャラクターに感情移入するのではなく、読者は第三者的な視点から展開を楽しむ」というのは「めだかボックス」にもあった傾向で、どことなく鼻持ちならないオタク的な視点だと思った。
サンデー漫画としては、少女漫画の『会長はメイド様!』にすら登場する学校内の不良グループというのが、『ハヤテ』には出てこないのも特色的ではある。このため、ヒナギクはろくに戦う相手がいないのでイベントがないときは、ぼーっとしている印象がある。

わ! 1 (ガンガンコミックスONLINE)

わ! 1 (ガンガンコミックスONLINE)

あー『わ!』とかあったわ。あれも少年漫画なのに生徒会長→謎の男子への恋愛感情の方が優先的に描かれてる漫画だなあ。『わ!』は生徒会長が普通な人すぎて逆にびっくり。

ペルソナ3 (4) (電撃コミックス)

ペルソナ3 (4) (電撃コミックス)

漫画というか、ゲームからだけど、『バトルする正体不明な生徒会長』としては桐条さんは若干類型的だと思ったが、バイクで疾走するイメージは良かったと思うの。後半までバイクにのって欲しかった。

馬越嘉彦 東映アニメーションワークス

馬越嘉彦 東映アニメーションワークス

振り返ってみるに、生徒会長役の共通個性としては黒髪ロングなんだろうかとか思ったが、ああー、ハートキャッチとかあったな。

轟世剣ダイ・ソード (4) (講談社漫画文庫)

轟世剣ダイ・ソード (4) (講談社漫画文庫)

女子生徒会長キャラの共通個性としては、ポジティブな真面目さ(真面目さと頭のよさは実は連動しないので賢いとは限らない)からくるリーダーシップと、子どもなのにプライベートと仕事を区別している律儀さと、それによる公務と男女関係への葛藤、といったところだろうか。

俺のようなおっさんは、失われた青春時代の回顧として、学校を舞台にした漫画を読まざるをえない。そして、漫画の登場人物に必要なのはお互いの関係性を示す記号、スタンス、である。自分の経験していないパターンでの学校生活で、ああ、でもそんなのあったなあ、という感じをだすのにわかりやすい記号は、そう多くはない。

大外パターンとしては、キャラクタのスタンスは学校外に求めてしまって、学校には単に通学しているだけ、という状態にすることがある。まあ、これだとジョジョ四部で仗佑たちが徐々に通学しなくなっていったように、そのうち漫画に学校がでてこなくなるほど学校の印象は薄い。逆手にとって『3月のライオン』みたいにしちゃうのはありだが、あれは学校ものではない。

to Heart―恋して死にたい

to Heart―恋して死にたい

典型的なパターンの一個はクラス内での記号ということで、委員長とか図書委員とか運動部員とか文化部員とかクラスのヒロインとか、まあそんな感じのやつである。数年前に流行った女クラス委員長の流れから、女生徒会長ブームがきたのでないかと推察する。

ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)

ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)

もう一個は部活動パターンで、新聞部とか考古学部とか、野球部とかテニス部とか、軽音楽部とかかるた部とか、セクシーコマンドー部とか囲碁サッカー部にテーマを投げてしまって、そのなかで活動をさせる、ということだが、これだとどうしても活動が制約されるうえに、部活動が専門的になり、部員たちが本気で活動をすればするほど、読者が感情移入した状態でついていくのが難しくなる。

しかし、単にクラスに普通にいるのに比べるとイベントにメリハリがつき、集団の方向性があって、舵取り役が必要になるため「無茶なヒロインにふりまわされる周囲」という体制がつくりやすい。『ちはやふる』とか『あまんちゅ!』とか。

その点、生徒会ものだと読者はついていきやすい。修学旅行なり、体育祭なり、文化祭なり、受験なり、そうしたものは「失われた青春時代」のなかでも経験したことがあるからだ。そして「生徒会」という役回りは、そのイベントの中心にいること、イベントを動かす側にあることを正当化することができる。

それでいて「生徒会」は他の生徒とは離れた存在で、ある意味学校内の異端児である。一見して正反対の役回りの「不良グループ or 番長」と「生徒会」の親和性は強い。それは、どちらも読者層にとってあまり経験することがないものでありながら、同じ学園生活を、読者とは違う観点で生活していることが相応しいからではないか。

しかしなんだな、こうして振り返るに、織田信長とか徳川家康とか、戦国武将が現代に転生して、学校の女生徒会長として、他校を統治下に治めていって日本の生徒会長界を統一するような話を書いたら売れるんじゃないかな。

一騎当千 18巻 (ガムコミックス)

一騎当千 18巻 (ガムコミックス)

追記
今日読んだ記事で、 http://oshiete.goo.ne.jp/qa/3129740.html という記事があるが、今回、表紙を一杯並べてみると、結構当たってそうで面白いな。左側を見ているキャラクターは、未来へ進もうとしていて、右側を見てるキャラクターは過去を大事にしたいと思っている、という気はする。