まどかマギカ新篇(ネタバレ)

「いやー、いい映画だったね」
「なんか、転校初日の花咲さんに無理矢理迫ってきた来海えりかのような強引さを感じたのですが、あれで本当に友達になれるものなのでしょうか」
「ああ。あの『強引に転校生の花咲さんにひっついていく未生育な美少女』はじつにもって、海風に揺れる一輪の花!だったね。なんとかなるんじゃないの。どうせ脳内なんだし」
「え? いや、ほむらちゃんが世界全部を書き換えたんですから、あれが現実世界なんでは?」
「そうなの? なんか、さやかCHANGが世界に外側があるみたいなこといってたじゃん」
「あー、確かにまどかも『うっ……頭の中で、何かが……』っていってたね」
「話は変わるんですけど、あれだとまどかが何か心の広いことを言うたびに後光が差すんじゃないでしょうか」
聖おにいさんみたいだね」
「『みんなが嫌がる掃除当番だけど、私がやっておくよ』とか、まどかがいうと」
「わーっと後光が差して」
「ほむらちゃんが慌てて『わー、まどか。後光が差してるわ』とかなるんじゃないでしょうか」
「『なにか下世話なことをかんがえて!』」
「『えーと、私たちがみんなフルーツモチーフだったのに、マミさんがチーズだったのは、遠回しに、くさい、と言ってるのかな?』」
「『いいわ、その調子よ。後光がだいぶ弱まってきたわ』」
聖おにいさん仏陀とキリスト?仏陀とマーラかな、みたいな」
「まあそんな感じだと、この楽しいですよね」
「でも、ほむらちゃん最後死んでなかった?」
「あー、なんか帆場瑛一みたいな感じで、あの世界を作ったことで満足しちゃったんですかね」
「あるいは、『腐り姫』でいうところの『記憶を消す(セーブリセット)』して、ニューゲームを始めてみたくなったか」
「最後のところで、きゅーべーが出現したので、もう一回みんなをきゅーべーに集めさせて魔法少女をやらせるのではないでしょうか」
「うーん、わかりませんね。解釈に悩むところです」
「なんか、この映画のほむらちゃんって、全体的に人に説明をしないよね」
「まあ、基本的にほむらちゃんの脳内で起きている出来事なので、他人がいないのでは?」
「いやいや、なんか説明してたけど、人格的にはマミさんとか杏子とか外部世界から拉致ッてきたので、別人格なんでしょう」
「あー。まあ、ずっとなんか他人を疑ってたから」
「花咲さんだったら『何か困っているんじゃありませんか?』っていうところだよね」
「一応、サスペンス指向なんじゃないでしょうか。他人を信じられない描写かと」
「でも、あんなに丸わかりでリアリティが減少していったら、サスペンスもへったくれもないんじゃないの?」
「まあそのへんは、尺が短いから」
「たぶん、あの羽生みたいな女児に疑いが行くように頑張ってたんですよ」
「ああ、あの羽生みたいな女児ね」

「世界としては『ウテナ劇場版』みたいでしたね」
「なんだっけ、それ」
「テレビシリーズでは、主人公ウテナが親友で魔女のアンシーを解き放つために、自分の命を捧げるのです。そしてウテナがいなくなった世界で、自由になったアンシーが外界へ旅立っていく」
「あれは学校の外側がない世界だったね」
「そうです。そして『卵の殻を破らねば、雛は生まれずに死んでいく』」
「そのへんの台詞がきたときは、ああ、ウテナのリスペクトなんだなあ。と思ったね」
「ともあれ、テレビでは魔女になったアンシーを救い出して、ウテナはいなくなります」
「映画のウテナって、パラレルじゃないの?」
「わたしは、パラレルじゃないと思っています。旅立ったテレビシリーズのアンシーが、もう一度ウテナと出会うために、テレビの鳳学園の外側に作り上げた世界が、あの映画の鳳学園だったのではないかと」
「なるほど。魔女だから」
「そうです。後思ったのは、『まどかマギカ』は説明しすぎです。とくに、何か状況に変化があるたびに、さやかちゃんが説明するのは、辞めた方が良かったと思います」
「そんなスパルタンだよ」
「物事は、状況から読み取るか、多少説明が雑な方が面白いのです」
「そうかなあ。わかりやすいほうがいいよ」
「ともあれ。劇場版のウテナでは、ウテナは転校生として外部から学園にやってきます。そして、今度はアンシーと二人で、学校の外側へと出て行くのです」
「なるほどねー」

「それにしても、きれいにおわった映画でしたね」
「そうかなあ、なんか居心地の悪さがあるけど」
「そうですね。たとえば『星のさみだれ』のような、人生の中に、大好きな女の子と世界を救った記憶があっても、そんなものは人生のなかの、子供時代のほんの一部なんだ。そんなものより、それから生き続けていくことが、ずっとずっと大事なんだ。という話じゃないですよね」
「そうそう。弱冠十四歳の美少女が、世界を救ってしまうなんて! これから、私はどうなっちゃうの!?」
「という、前向きな発想をみんながしていれば、誰も苦労はしません。でも、世間には大人になることを拒否して、潔くかっこ良く生きていたい人もいるのです」
ラクトガールね」

「あんまり関係ないですけど、彼岸花のモチーフが多くて」
「ああ」
「すごく、『艦これ』っっぽいな、と思いました」
「あ、そう」
「『艦これ』も、戦いで散っていった艦娘たちの魂はきっと汚れて、深海棲艦として蘇ってくる、という意味でボスゲージに彼岸花を使ってますから、彼岸花というモチーフがかぶるのは当然のことかもしれませんね」
「そのあたり、著しくどうでもいい」

「赤い彼岸花花言葉 は「情熱」「独立」「再会」「あきらめ」 「悲しい思い出」「想うはあなた一人」「また会う日を楽しみに」 です」