PS4「新サクラ大戦」感想

これは、ゲーム版「新サクラ大戦」の感想です。アニメ版の感想は含んでないです。アニメ版、いい感じですよね。ゲーム版で2周して、3人分エンディングまでみたので感想を書きます。

 

(以降ゲーム内容全般について、ネタバレがあります)

 

まとめ

ゲーム版「新サクラ大戦」は、かつてのIP「サクラ大戦」シリーズのリブート、その第一歩目として作成されたゲーム作品で、成功している。とは言い難いものの、一定の良さはある。惜しい。作品だと思う。

美点と人それぞれと思う点とよくない点

いいところとしては、キャラクターが「みんなカワイイ、みんないい子」であるところだと思う。キャラクターについては、敵キャラ以外は全員ちゃんと魅力的なキャラクターに描かれているか、少なくとも魅力的に描こう、という意志は感じる(シャオロン君の上海歌劇団が序盤若干余計なヘイトを稼いでる気がするが、気の良い炒飯野郎と変態だー、になるのでまだ許せる)。また、音楽もいい。基本的に昔のサクラ大戦のままなのだが、ゲーム機が新しくなったこともあり、とても豪華な音がする。

評価が別れるだろうなー、と思うところとしては、ゲームシステムがある。今回、サクラ大戦のゲームシステムはほとんど再利用されていない。アドベンチャーパートは3Dで作られた帝劇なり、帝都の街中を歩き回る形式だし、戦闘パートはアクションゲームになった。

よくない点としては、シナリオがある。ゲームシナリオはあまり良くない。しかし、同情すべき点があるとしたら「短い」というところがあると思う。このサクラ大戦のリーブート作、「新サクラ大戦」に与えられた話数は何話なのか?「八話」である。この話数の短さが、かなり色んなところに悪影響を与えている。

「短さ」と話全体の食い合わせの悪さ

「新サクラ大戦」のストーリーの主眼は「新帝国歌劇団」のスタートアップである。真宮寺さくらがいて、大神一郎が率いた伝説の帝国歌劇団は10年の作中時間経過を経て、世界の中で落ちこぼれの味噌っカスになっていた。その状態に新人の隊長としてやってきた、主人公神山誠十郎は落ちこぼれチームを立て直し、戦闘部隊としても、舞台に立つ演者のチームとしても帝国歌劇団を再建していく、そして歌劇団一位を決める戦車道大戦的なトーナメントリーグを勝ち残って、廃止されかけた帝国歌劇団を存続させるべく戦うのだ・・・要はガルパンである。

ガルパンは戦車だけやればいいし、ラブライブならライブだけやればいいのだが、サクラ大戦は両方をやらなきゃいけない。両方みそっかすな状態のメンバーを立て直して、世界有数というレベルに持っていかないといけない。(ガルパンとかは結局「高校生」という言い訳ができるのだけども、サクラ大戦の場合掛け値なしに世界最強がゴール地点である)。だいたい、六話で。

こういう話なので、作中では「戦闘チームとして」「演劇チームとして」、彼女たちが能力的にもチームとしても成長していく必要があるのだが・・・・・・そんなときに話が短いというのは、「なんかしらんうちに演劇能力が向上している?」「なんか気がついたら、みそっかすだったはずが結構うちら世界的にも強いんじゃね?」「なんかいつのまにか私たちすごく仲がいいチームじゃない?」となってしまう。

作品のテーマが成長なのに、特に苦労した形跡もなく、あっとういう間に成長してしまうのでは、台無しなのである。ラブライブ!(無印アニメ1期)だってもう少し間があったぞ。

また、この話全体の短さは「ヒロインの一人なのに個別回がない」とか「個別会がヒロイン選択の後にくる」みたいな感じで、せっかく魅力的なキャラクターのよさみを減衰させることにも働いてしまってるのがある。

このためにトーナメントの相手になる歌劇団はあっという間に負けてしまって「そんなにここで泣かれてもこっちが困る」ということになるし、隊長がヒロインを選んでも「あれさっき個別会一個やったばっかじゃん」みたいになって、「まあ隊長が選んだんなら」みたいな発言に説得力がないみたいなところがある。

スターライトボーイズだめじゃない。キャラクター描写について

しかし、かといって「新サクラ大戦」はダメではない。むしろ良い。

そもそも「サクラ大戦」は別に百点満点のシリーズではなかった。1997年には、エバンゲリオンがあり、もののけ姫があり、ブレンパワードがあったわけだが、サクラ大戦はそれらと比べて対等に戦えるような作品ではなかった。しかし、すごい作品はよく、すごくない作品はよくない、と、そんな単純なものではない。そこそこ良い作品にも、光ところはある。キャラクターである。

前の「サクラ大戦」はモロに「エバンゲリオン以前」の文法に則って作られたロボットものゲームだった。「エバンゲリオン以降」の文法で作られたロボットものゲームとして「ガンパレード・マーチ」がある。

エバンゲリオン」の前後でキャラクター描写は多分大きく変わっていて、「エバンゲリオン前」の90年代キャラ描写というのは、キャラ個性の記号化だったと思う。いつでもどんな時でも、こいつはこういうキャラなので、こういう行動をします。という一貫性。これが前の「サクラ大戦」でのキャラ性だけども、作品中のキャラクターのエキセントリックさが、今の時点で見ると「こいつら・・・」ってなるレベルに至っている。

エバンゲリオン」のあとに、キャラクター描写は「そのキャラと他者との関係の描写」に変わっていった。このキャラはこういう時にはこういう行動をします。という蓄積がキャラクターであり、それこそがキャラの個性を描写すること、になったのだと思う。

それから二十年経って、「新サクラ大戦」は、良くも悪くも「ガルパン」「ラブライブ!」以降の女子チームものの文法で作られている。

このため、キャラクター間の人間関係はかつてのサクラ大戦シリーズのなかでも随一に濃い(若干さくら寄りではあるが)し、かつてのサクラ大戦でよくいた「自分のワガママやプライド、こだわりのために他のチームメイトに迷惑を掛ける系」のキャラはほぼいない。いないんですよ、良い時代になりましたよね、神崎支配人。

チームの大黒柱である初穂、牽引役であるさくら、細々としたことまで気を利かせるあざみ、知恵袋であるクラリス、チームの姉役として振舞うアナスタシアと、ちゃんとチームとして一貫して彼女たちは役割を果たしている。

神山君も、かつての大神がパッション、大河がキュートだとすると、クール系の隊長として(なぜ人はすぐに人間をキュートクールパッションで分けようとするのか)、とてもいいキャラクタだと思うのです。「花見の準備をせよ!」とかの軽口がちゃんと通じるのもいいよね。「八百屋のお菊ちゃん」シリーズがベルリンSAKIMORI(ベルリンのSAKIMORIのこと)たちに通じないのは残念だけど。

かつて同じように、チームとして内部の関係がよく描かれたパートとして「サクラ大戦3」の前半があり、あのときもちゃんと「エバンゲリオン以降」の作品としてチームメンバーの関係が奇跡的に描かれていた。まあ、中盤以降いつものサクラ大戦になってグダグダになっちゃうんですけどね。今回はちゃんと、最初から最後まで、彼女たちのチームが出来上がっていく過程を、やってるわけですよ。これだけでも、かつてサクラ大戦のなかで出来なかった領域まで到達してるといっても過言でもないわけですよ。(まあ、上に書いたように、話が短いのがたまに傷なんだけども)

ゲームシステムの変更について

ゲームシステムは旧来のサクラ大戦から大きく変わった。アドベンチャーパートでは、すべてのイベントを踏んでから先に行けるようになったし、戦闘はアクションになった。

アドベンチャーパートはしかしながら、好感度とプレイヤーの選択肢によって出るイベントが違うため、出ている全てのイベントを踏んでいても、全イベントを通ったわけではなく、かつてと同じように複数回のプレイに耐えるようになっている。

戦闘は前と違ってアクションで、基本的に仲間のうちの一人と隊長のペア活動になったため、全員の性能を把握するのは後々になるのだが、かつてのサクラ大戦の戦闘パートにあった退屈さ、というか、このゲーム目をつぶってても進んで攻撃を選択できれば敵に勝てるようになってるでしょ、みたいなゆるさがなくなったのはよくなったと思う。

サクラ3のOPアニメみたいなスピーディーな戦闘ができるのは良かった。

ストーリー外で気になるところ、濃厚接触会話は良くないと思う

システムについて、濃厚接触して会話するパート、クソ恥ずいので辛かったです。。。神山隊長は控えめにいってジゴロ、地獄に落ちればいいのに。

いや、合体攻撃とかはもう酒飲みながら、ガハハと遊べるのでいいんだけど、濃厚接触会話は割とマジなトーンで展開されるのでオッサンには辛いわ。と思いました。

あと、キャラの全身のデザインとして、初穂はギリギリ許容できるけど、アナスタシアさんの私服はさすがに痴女的すぎではないか。対魔忍じゃないんだから、正面から見たときに横乳が見えるのはやりすぎだと思った。

理想としては

理想としてはね、やはり全部で今回の範囲をやるなら、あと2話、2話と3話の間に1話、5話と6話の間に1話いれて、初穂の個人回とアナスタシアの個人回(もしくはサブキャラたちの回)にして、クラリスと初穂が主演やる舞台の話数は入れておいた方が良かったと思った。

そんでね、もっというと13話構成にして、今回なんか中途半端な感じな敵は中ボスにして、ラスボスと戦って大団円、という話の流れにした方が良かったと思うのです。

とはいえ、ゲームとしては二周、後半三回やって思ったけど、このゲームのバランス、プレイヤーが操作に不慣れなことを前提にしているので、慣れてくるとサクサク進むし、そうなってくると今度なんか戦闘単調なのでは??みたいな思いがこみ上げてきてしまうので、今回ぐらいの長さに収まっているのは逆に良かったのでは?みたいなところもあるので難しいね。

少なくとも最終話前半パートは、プレイヤーが選んだヒロインで個別にして欲しかったなあ。

PS4のトロフィーとか見て、残念なところ

サクラ大戦というか、ギャルゲーにおける人気の高いキャラというんは出てきてもしかたないと思うの。しかしながら、例えば五人キャラがいて、その人気不人気は、人気キャラが25%ぐらいの割合をとるぐらいで収まっておしいのですわ。

しかしながら、今回「新サクラ大戦」ではあからさまにゲームが「さくら」に集中してしまっています。トロフィー的に、新サクラ大戦をクリアした人間はだいたい五割なのですが、そのうちヒロイン個別エンドで「さくら」を選んだ人間が35%。他は10%弱。まあ、あのね、話がね、あまりに「さくら」に寄ってるんで、よほど幼馴染が嫌な人以外はこれさくらを選びますよ、そら人道的な問題ですよ。サブキャラとの因縁もなんかさくらに集中してるしね。

でも、サクラ2以外って、だいたい各キャラ均等に近いようにやってたじゃないすか。ということで、この辺は残念でした。

TVアニメ版は面白いでんな

TVシリーズ良い感じですね。このまま良い感じに進んでいって欲しいですね。