THIS IS IT

映画館で観てきたが、これは映画館で観るべき映画だと思った。音響が九割の映画なので、映画館で観ないと、たぶん辛い。私は70分が過ぎたあたりで眠たくなってきたが、大音響のおかげでなんとか最後まで持った。家でDVDで見たら、たぶん三回は寝たと思う。ストーリーのない映像を二時間みるのは辛い。
マイケル・ジャクソンの最後のライブツアーのリハーサル映像から再編集された映画だった。私は70年代の末に生まれ、「キャプテンEO」と、メガドライブのゲームでしか、ポップスターのマイケル・ジャクソンを知らない世代の人間なのだが、なんか同世代が「感動した」という感想をブログによく書いているので、今回は見にいってみた。

うん、たしかに音楽はすごいな、と思う所は所々にあったんだが。「感動した」「泣いた」という、そこまでは……ちょっと。俺がただのゲーオタでアニオタで、音楽ファンじゃないからかなあ。

次々と曲が流れていく構成なのだが、基本的にリハーサルの映像なので、それぞれの楽曲を一曲丸々やるわけではないし、「最終的なステージの演出」も見られない。完成型は一切なくて、どれも過程しかない。たぶんもとの楽曲を知っている人からすると、美味しいところのつまみ取りなんだろうけど、私はもともとほとんど聞いたことがないので、善し悪しが判断つかない。

あと、なんだ。これは俺がひねくれものだからかもしれないが、「マイケルはすごい」「一緒にステージに立てるなんて夢みたいだ」「彼は頂点にいる人だ」と、インタビューでマイケル・ジャクソンが褒め称えられるのだが、マイケル側に居る人々が撮影した映画で、ただ一方的にマイケルを褒め称える図を見せさせられるのって、なんか一抹の気持ち悪さを感じる。なんか、横山やすしが死んだあとで、みんながみんなして、「やすしさんはすごい人格者だった」みたいな持ち上げ方をしていたのに通じる気持ち悪さだ。そら、死人に鞭打つ人はいないだろうけどさあ……

マイケル・ジャクソンが真剣に舞台に向けて取り組んで居るのは、映像を見ていれば理解できることで、冒頭のいくつかのインタビューだけにして、あとの方のインタビューはなくしたほうが鼻につく主張の強さを和らげることができたんじゃなかろうか。でも、アメリカさんのつくるドキュメンタリー映画って「不都合な真実」にせよ「ボーリングフォーコロンバイン」にせよ、いつも「主張がくどい」から、それに合わせるとこんなものなのかもしれない。