しゃべれども しゃべれども

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

よい江戸東京映画。
国分太一噺家の役をやっており、ヒロイン役が香里奈。ふたりともあまりたいした役者とは思ってなかったんですが、けっこう好演してました。国分太一が、ちゃんと噺家っぽく、噺の中で目で語る部分の演技が良かった。香里奈の無愛想なのもよかった。
伊東四朗八千草薫はやはり別格。「サトラレ」以来、八千草薫の演じるおばあさまには弱いのですが、今回も江戸東京のおばあさまの役を、品があって、かつ、かわいらしくやられておりました。

全編通して、浅草から隅田川の遊覧船、都電荒川線が東京の情緒を出すのに効果的に使われていてまして、私はこういうのが好きなんで、堪らなく良かったです。全編通じて、冷酒を飲むシーンがたくさんあって、お酒が旨そうだなあと久々に思いました。ただし、こういう映画を見てても、都電荒川線をみているとハルヒを、隅田川を見ていると時かけを思い浮かべるのはオタクの習い性でありましょう。

テーマは「はなすこと」。映画のマクラの部分で伊東四朗のいう「おまえの噺なんて、誰もきいていやしないじゃないか」「自分のしゃべりたいことをしゃべってるだけだったら、壁にでも向かってしゃべっていろ」という話が最後まで尾を引いた。話すプロである噺家が、自分がしゃべることにせいいっぱいになってしまって、相手を見て話していないようじゃあ、いけないなあ。という話なんですが、自分も自分のしゃべりたいことだけを話していることがあるなあ。と。