禁じられた楽園

禁じられた楽園 (徳間文庫)

禁じられた楽園 (徳間文庫)

最近の恩田陸は歩く話が好きだな。「茶色と黒の幻想」「夜のピクニック」に続いて、延々と歩く話だったような気がする。あとは「花」か。なんか、恩田陸の中で「花」と「母親」というのはイメージがかぶる部分があるのかなあ。

面白かった。この前に読んだ「黄昏の百合の骨」がイマイチ肌に合わなかったので、これは久しぶりに、恩田陸の当たり作品だった。やはり、サスペンスものよりホラーの方が面白いと思う。最後に機械仕掛けの神が登場して、それまでの展開をまるごとぶちこわして予定調和に終わるのも、まあ恩田陸らしくて良かったと思う。恩田さんこそ、一回最後まで黒々とした話で突っ走って見て欲しいんだけどなあ。

若い男女が疲労と恐怖でお互いを思いやる気持ちもまるでなくなっている状態が丹念に書かれている部分が面白かった。その辺がないと、普通の恋愛ものになりそうな場面を、うまく演出してると思った。映像化すると、ここまで内心の恐怖を繰り返しかけないから、単純な恋愛ものになってしまいそうだ。この辺は、本の醍醐味だと思う。

短く書くとおのおのの子どもの頃の恐怖の記憶、というホラーなのだが、一つの内心の恐怖を繰り返し、繰り返し書いて、これだけ揺さぶるのは凄いなあ。