輝くもの天から墜ち

「たった一つの冴えたやり方」というタイトルが有名なSF作家、ジェイムズ・ティプトリージュニア(故人)の新規翻訳。長編。

蝶のような昆虫から進化した美しい異星人の住む惑星のヒューマンの保安官夫妻と医師。そこに、崩壊した星の最後の輝きを見るために訪れる多様な観光客たち。ポルノ作品に出演している少年少女たちとカメラマン、老大学教授と偏屈な芸術家、若年のプリンスと大貴族姉妹、水棲人と間違われた客、女軍人。

そこで起こるのは、古典的なサスペンス劇で、その筋立ては、べつに舞台は大西部でも、南の島でも、どこか未開の地でさえあれば、どこでも良かったように思える。が、そのストーリー展開が十二分に面白かった。かすかなSF的な味付けを含めて、ティプトリーの小説ってこんなに面白かったのか、と驚くほど面白かった。

いや、正直「たった一つの冴えたやり方」「愛はさだめ、さだめは死」を十年前に読んだときには、全然その面白さが分からなかったし、最近よんだ「すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた」は、あまり作品世界に入り込めなかったのだけれど、これは面白かった。

残酷な描写に対する念の入りよう、サスペンス部分の疑心暗鬼っぷり、登場人物が運命にあらがう姿、最後の余韻ある展開が良かった。中盤でサスペンスが解決したあとで、最後の展開は読めなかった。

ゆっくりと墜ちた星は流れて拡散していき、落日がくる。それまで無垢に美しく輝いていた異星人たちも、ただの昆虫じみた姿に見えてくる。そんな終わり方は、アラビアのロレンス