マジック・キングダムで落ちぶれて

マジック・キングダムで落ちぶれて (ハヤカワ文庫SF)

マジック・キングダムで落ちぶれて (ハヤカワ文庫SF)

新年初SF。そこそこ読めた。

二十二世紀くらい?
人類は記憶を電子データとしてバックアップし、そこからクローンのカラダへ復活することで永遠の命を得ていた。無限のような生産とエネルギー革命によって、すべての財が望まれるだけ存在する世界ができていた。貨幣経済はなくなった。しかし、サービスを提供するのはやはり人であり、人からの評価が唯一の評価基準として、使われるようになっていた。そして、「そうでなかった」頃の記憶を持つものたちが、若干ではあるがいる世界。

だが、しかし、人類は宇宙に乗り出すわけでも、世界を意のままに操ろうとも、完全に電子の世界の存在になるわけでもなく、単に21世紀の人類の延長として、そこにいて、しょうもない毎日を過ごしているのだった。本作はそんな未来世界の、フロリダディズニーランドでの平凡な(陰謀があったり殺人があったりするが、基本的には「ひぐらし」よりよほど平凡な)日々をつづった長編SF小説である。

この「評判だけで社会的評価が決まる」のは、ページランクとかはてブっぽくもある。はてなスターだけで*1経済力も社会的評価も決まってしまう社会。本作は、それって恐ろしいよね、という小説であるのですよ。たぶん。

このところ、バックアップから復帰することに関するSFってなんか続けざまに読んだな、前のは「ニュートンズ・ウェイク」だったか。結局、バックアップから復帰するんだと、客観的には生き続けているが、主観的には死ぬんじゃないだろうか。ひたすら並列化していくのは、イーガンだったっけ。

*1:カウンターの数でも閲覧者の数でもダウンロード数でもいいけど