ユービック

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)


面白かった。
1992年の恒星間宇宙船と、半生人と超能力者と不活性者の話。
と見せかけて、実は崩れ落ちていく現実のなかに居続けなければならない、死につつある人たちの話。


半生人の見る世界は実は超越者によって作られて維持されているもので、
半生人が見ていない部分の世界は実は最初から存在しない。
そして、視界から消えた瞬間に、存在自体がなくなる。
1969年のSF小説なのに、この世界観はもう一歩でグレッグ=イーガンにたどり着きそうだ。


過去を改変する超能力は最強だと思う。
この作品中でもその時点で世界が分岐してるし。
そっちも読みたかった気がする。


そして、ユービックの話。
各章の柱につけられているユービックのCMがよい。
柱だけかと思っていたら、作中でもCMが流れているところが好き。


でも、確かに「アンドロイドは〜」や「高い城の男」に比べれば面白かったが、
読後感は短編の方が面白いような気がする。
結末のはじめ方がちょっと、ちょっとぶち壊しだったせいだと思う。
この話をぶち壊す結末は、本当に計算の上で作られてるんだろうか。


ディックは1939年に戻っていくのはなぜだろう。
「高い城の男」も第二次大戦でドイツが勝利した世界で、アメリカが勝利した世界が
うわっかぶせになってくるという話だったよーな。


作中半ばSFの1992年が崩壊していく先で出現する1939年のアメリカは、
その年代の話が好きな自分にはとても良かった。