シンデレラマン

シンデレラマン (竹書房文庫)

シンデレラマン (竹書房文庫)


普通によくできている映画。
亡国のイージス」見た後に感じた、「映画の作り方知らないんじゃないの?」に対する回答みたいな映画。映画の作り方に従って脚本を処理していくとこうなります、という。そんな感じ。
不足もなく過剰な部分もなくて、見ていて非常にバランスがとれてるんだけど、それゆえになにか食い足りない感じが残った。
でも、僕はこの時代背景が好きなので、ファッションとか町並みだけでも楽しめました。


1930年代前半、アメリカ。大恐慌の最中。
80戦KO負けなしのプロボクサー、ジム・ブラドックは大恐慌前にヘビー級チャンピオンの座に登りつめ一試合3000ドル近くの収入を得ていたものの、大恐慌の起きた年に判定で敗れ、それ以来負傷と故障を続けて負け続け、気がついた時には日雇い労働者として暮らし、1934年には電気やガスも止められ、生活保護を受けるまでに凋落していた。


三人の子供のうち、長男は両親から引き離される不安から盗みを行い、長女は学校へ通えず、次男は暖房の無い家の中で風邪をこじらせる。
ブラドックは右手を骨折していて、日雇いの仕事もそうはこなせない。
日雇いの日給が7ドル弱なのに借金は百ドルを超え、借金返済のめどもつかない。
・・・・・・なんか、十年くらい後には日本にもこういう状況が蔓延しそうな気がしないでもないと、少し憂鬱な気分になり。


そんな生活のなかで、突然かつてのマネージャーが持ってきた試合。
スポーツ記者からは「亡霊か幻影か」と皮肉られつつ、借り物で挑んだ試合から、ブラドックは二度目のチャンスをつかんでいく。


なんか、ようするに「シービスケット」なんだよな。
いったん落っこちて、見捨てられた男が自分の手でよみがえっていく、という。
シービスケット」の方が過剰な部分が多くてストーリーは面白かったけども、この映画で久々に見たボクシングシーン×4(?)はかなり良かった。
最近読んだ「サマー/タイム/トラベラー」にあったが、ごく近い未来にスポーツ中継はフィクションとして見ることになるかもしれない。とか、少し思ったり。


でも、この映画にあるようなアメリカが絶望のどん底にいた時代からほんの5,6年で、「ヒトラー最期の十二日間」の冒頭のシーンにつながっていって、この映画で酒場でブラドックに歓声を送った労働者たちが遙々ドイツで市街戦をすることになるんだよなー。