趣味でゲームを作る、ということ

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僕がSRCに関わってシナリオを作り始めたのは前世紀である。
最初にシナリオをシナリオコーナーへ”投稿して配布してもらった”頃にシナリオを作っていた人を見ることは、あまりない。
おそらく、古老の部類だろうと思っている。


同時に、果たしていつまでシナリオを制作できるのか、維持できるのかは疑問が多い。
次に大きな仕事の波がやってきた後にどうなるかは、まるで分からない。
というわけで、上のおもしろいコラムを読んだこともあり、ちょっと自分なりに感じていることを書いてみたい。

ゲームを作る、ということ。


私はシナリオを作ることは「素材をもとに、遊べるゲームを作ること」だと思っている。
二次創作で、ということふまえるなら、「自分の好きな作品の好きなシーンの良さを人にアピールしつつ」、それができれば、作る上では他の要素はない。*1


コンピューター・ゲームには他の、小説だのドラマだのの娯楽に比べて異なる点が多くある。
そのうち、もっとも重要なことは、ゲームを操作するプレイヤーを必要とすることである。


プレイヤーがユニットを操作してもしないでも、結果が同じなのなら、そんなゲームを遊ぶ必要は全くない。*2
おとなしく漫画かアニメでも見ていたほうが、よほどマシだ。その方が時間も節約できる。
*3


たとえば、逆転裁判がすばらしいゲームであるのは、この点だ。
逆転裁判では、「プレイヤーが矛盾点を発見」しないかぎり、依頼人は敗訴してしまう。
どんなに千尋さんが助けてくれたとしても、依頼人を助けることができるのは、プレイヤーだけなのだ。
*4


SRCはSRPGなので、ユニットを置いてマップをかけば、それなりにゲームになる。
よほどタコなバランスに作らなければ、プレイヤーがユニットを動かして敵と戦わない限り、味方は敗れ去ってしまう。*5
ちょっと工夫を凝らすなら、プレイヤーに複数の選択肢(複数の侵攻ルート、複数の迎撃箇所)を与えるべきだし、先に倒すべき敵と後で精神コマンドを使って倒すべき敵を適当に配置してやれば、さらにゲームっぽくなるだろうが、その辺りの小細工はいつの日か書きたい。


ただし、逆転裁判にもSRCにも、同じ欠陥がある。
それは解答にたどり着くプレイヤーの思考は複数あるにせよ、解答そのものと、クリアした結果えら得るOUTPUTが、結局製作者によってあらかじめ決まっている所である。誰がやっても得られるものが同じなら、わざわざ自分でやらなくても人がやっているのを横から見るなり、ググって攻略サイトでこの後の展開を見てしまえばいい。
定められたエピローグ部分を我々はどう書くべきだろう。


逆転裁判では、このストーリーが一本道である欠陥を軽減するため、ストーリーを「プレイヤーが矛盾を発見すること」に従属させるという方法をとっている。主人公はプレイヤーが発見した矛盾点から推理を展開していき、検事はその着眼に驚き、真宵はプレイヤーを賞賛し、依頼人は感謝してくれる。
もし、プレイヤーがどんなに苦労して矛盾点を発見しても、何の反応もなかったり、それとは全く関係ない話を聞かされたら、という"逆転裁判"を想像してみるといい。
プレイヤーが行った判断によって、ゲーム内の世界に変化が発生し、プレイヤーへフィードバックされる。
これによって、もっと、もっとゲーム内の世界へ影響を与えていきたいとプレイヤーは考え、プレイを続けてくれるだろう。*6


まとめます。
プレイヤーが何もしなくても勝てるようなゲームはゲームではなく、ゲームの結果がゲーム内の世界へ何の影響も与えないような物語はプレイヤーをゲームへつなぎ止めることができない。
だから、あなたが作るシナリオでは、プレイヤーの判断によって主人公は障害を排除するべきだし、その結果としてゲーム内世界の物語が展開していくべきである。

*1:本当のところ、作ったものを維持することの方が大変なんだが

*2:もちろん、「第13艦隊は善戦したが、結局戦争には負けてしまった」という「結末」を迎えるゲームはあってもいい。ここでいう結果とは物語の結末ではなく、プレイヤーに提供されるOutput自体である。

*3:とくに"バランスと物語性に考慮されて"作られたコンピュータRPGは、プレイヤーが「戦う」を連打していても、「定められた通りに」ゲームが進んでいくため、ゲームになりにくい。せいぜい、隠しイベントが見れるとか、短いプレイ時間でエンディングが見られるとか、その程度の違いしかない。

*4:SIMPLE2500のTHE 裁判 新米司法官 桃田司の作り手が全く理解してなかったのはこの点だと思う。あのゲームはプレイヤーが話を聞くだけで勝訴になったり、三択を深く考えずに選べば勝訴することができた。THE 裁判がつまらなかったのはキャラクタの魅力とかシナリオの長さではなく、プレイヤーがやることがボタンを押して用意された話を読むだけだった所だ。

*5:試しにスタート後、何もしないで自動反撃モードでターン終了し続けても勝てるようなら、自分がやりたかったことが小説や漫画ではなく、本当にゲームだったのか、いっぺん考えなおした方が良いと思う。

*6:むかし、高橋源一郎が「ドラクエ3」について「誰もが遊べるように、ドラクエ2から過剰ななゲーム性をそぎ落として、その代わりに物語を詰め込んだ」というような評論を書いていた。本来、ゲームが十分に魅力的であれば、ウィザードリィ風来のシレンの如く物語がなくてもプレイヤーに遊びつづけてもらうことは可能なハズだが、SRCのシナリオには自分が好きなアニメ・小説作品を人にアピールするという側面があるため、どうしてもエピソードを挟み込む傾向がある