夜のピクニック (中盤)

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

面白い!
「ロミオとロミオは永遠に」はイマイチだったけど、これは面白い。
恩田陸にオイラが求めているのは、「ロミオ」みたいなスペクタクル劇ではなくて、こういった平凡な日常のなかの非日常な時間のなかで、微妙な人間関係が解きほぐされたり、人間関係のの意外な秘密が明らかになる話なんじゃないかと思う。

大筋では、意外なことに「ロミオ」の前に読んだ「茶色と黒の幻想」に似ている。
あれは、大学時代に友人だった四十絡みのおじさんとおばさん4人が、屋久島を三日くらいかけて歩きながら、以前から疑問に思っていたお互いの秘密を解いていくといった話で、これは高校三年生たちが学校行事で一晩歩きつづける話と、設定年齢とかキャラクタの初々しさは違うものの、大筋は非常によく似ているし、主要な登場人物の造形もけっこうにている。

本作の主人公である「融と似たもの同士の貴子」は、茶色と黒の幻想の「蒔夫と利枝子」によくにたカップル。融が一見しっかりしているようでいて、実は黒々としたものを抱えているのも蒔夫と似ている。
そして、主人公の片割れである融には、(蒔夫と似ている)私自身に似た面が多くあり、とても感情移入できた。
恩田陸は男同士の友情についての幻想からは逃れられてないが、結構腹黒い男の子を書くようになったなあ、たいしたもんだ。と思った。「六番目の小夜子」や「球形の季節」のころには、本当に男は別世界の生物みたいな書かれ方だったのに。

作中で「ナルニア国物語」の適正年齢の話がでてきたが、私もこの小説を読んだ時期を誤ったと思う。これは、十代の後半のころに読むべき小説で、そのころ読んでおけば、こんな難儀な大人にならないで済んだんじゃないか、と思った。