ひとりっ子

ひとりっ子 (ハヤカワ文庫SF)

ひとりっ子 (ハヤカワ文庫SF)

今年初めての小説はイーガンであります。
いいなあ、この宗教と愛という幻想に対するシニカルな視点と、分岐宇宙と人間の意志に対するポジティブな解釈。(短編「オラクル」)


短編集としては、前半の短編でパターンが決まり切ってしまっている(主人公がある伝統的な固定概念(絶対的な自己とか、理想的な愛)を持っている→それが打破されてしまう)のがイマイチだけど、これは日本オリジナル短編集なんで、同じような話が続いているのはイーガンのせいではない。短編集「祈りの海」の方が多様な内容だったなあ、と思うが。


と、思っていたら、なんか「二人の距離」とかは、愛と相互理解について、逆に前向きな解釈の小説で面白かった。「宇宙消失」の時には、真逆な(愛がいくら深まっても相互理解はできない、という)結論にいたっていなかったっけ? まあ、結末はいつも通りなわけですが。