猫の地球儀〈その2〉幽の章

猫の地球儀〈その2〉幽の章 (電撃文庫)

猫の地球儀〈その2〉幽の章 (電撃文庫)

面白かった。ジュブナイル小説で、夢とロマンの裏腹な部分をちゃんと書いた所が面白いと思う。逆バージョンの「星虫」なんだな、と後半読みながら思った。


「星虫」って、宇宙に行きたいな、と思っている高校生たちが、周囲の迷惑顧みず宇宙に行くことを決意するまでの物語で、その後本当に世界中に迷惑をまき散らしながら宇宙開発へ進んでいく世界っていう私の大好きなラノベなんだ。
「星虫」には、星虫のせいで本当に深刻な迷惑を受けた子供たちの話はでてこなかったように思う。だいたい、今思えば、南太平洋にロケット打上基地をつくる資金があれば、エイズの一つや二つ、根絶できそうなものだ。


自分の趣味の問題と、人類の未来像を意図的にまぜこぜにして話すのは、SF作家の常套手段だ。「ふたつのスピカ」にでてくるライオンさんは、夢を手に入れるために妥協しちゃいけないと言うけれど、大人というのは常に妥協し続けている人のことなのかもしれない。たとえば、「俺たちのやっていることは対処療法にすぎない」と言う、パトレイバー後藤隊長のように。


信じれば、必ずいつか夢は叶うとフェイスレス司令も言っていた。
だが、そのために彼がどれだけの犠牲をだしたのかは「からくりサーカス」を読んで熟知すべし。そして、フェイスレスは結局、夢を叶えることができなかった。