ブレイブストーリー(上)

ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)

流行物の制覇が今年の抱負ということで、読んでいる。宮部みゆきのおそるべきバランス感覚を味わえる小説。
甘すぎず、辛すぎず、感傷的すぎず、シニカルすぎず、子供だましにならず、ライトノベルの範疇としても読める、30歳にも読めて、中学生にも読める、という小説を微妙なバランスの上で成り立たせているのが凄い。


以下ネタバレ。


主人公のワタルが、幽霊ビルの噂を聞いて、何度かビルに忍び込んだんでいるうちに美少女にドキっとしたり、謎の転校生がやって来たり、気がついたら妖精の声を聞いたり魔法使いにあったりしているうちに、異世界に迷い込んだと思った次の瞬間には父親がでていってしまったあたりまで。


主人公の亘にしても、美鶴との神社での会話みたいなかっこわるい所と、叔父との神保町でのエピソードなどしっかりした所、たびたび癇癪を起こす子供っぽいところと、謎の美少女のうわさ話を聞いて身震いする大人の視点を持っている所をうまくバラバラに配置してあるのがすごい。

亘の家族についても父親のことや母親のことについて、祖母から父親と似ていると言われて微妙に喜んだりする亘のエピソードや、学校での不良小学生の事件に憤る母親のエピソードなど、基本的にはよい家族として暮らしていたことを念入りに書きつつも、美鶴の写真についての指摘や不自然な父親の言動が積み重なることなどで、ちくり、ちくりと積み重ねていくのが本当に凄いのですよ。そんでもって、それを美鶴の言葉でシニカルに方向転換したり。


面白いっすけど、これはテレビアニメか、ドラマでやる話で、二時間の映画一本でやる話じゃないよなあ、あれこれのディテールが面白いのに。だが、動く絵面は見たいので、読み終えたら映画も見てみようと思う。


上巻を読み終えたので追記
異世界に来た途端に浮かれまくる主人公のお子さまっぷりはすごいなー。でも、宮部みゆきの描く異世界はちゃんと楽しそうだ。そして、女神異聞録ペルソナ本ルートのオチだと予想。