順列都市(上)

順列都市〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

順列都市〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

「しあわせの理由」→「祈りの海」→「宇宙消失」→「万物理論」→「ディアスポラ」→「一人っ子」と読んだ後で、手にとって読んでみた。うーん、部分部分は面白いんだけど、なんか意外と読んでて盛り上がらない。「宇宙消失」「万物理論」にあったアクション色も「ディアスポラ」にあった大風呂敷もなく、ひたすら思索と試験を繰り返す展開が続くからだと思うが、長編小説として読み続けるのが結構つらい。

機械のなかに作られた疑似人格が、仮想世界を見渡して自分の背後の世界や、視野の端の方は計算が省略されていて、自分が目を向けたときにだけ詳細に作られるんだ、とか、コンピューターを使って仮想世界を作っておいて、そこに計算能力の限界とか、金銭の問題を持ってきたあたりが面白いのかなあ、とは思うんだけど、そこは、三十年前にディックがすでに通り過ぎた所だ。

もっと大風呂敷が下巻で展開されることを期待。