皇帝ペンギン

一回見ている途中で寝た。心地よく眠れた。かといって、つまらなかったか、といわれるとそうではなく、緩急がなくて映像が美しい系の映画だったから自然な反応だったと思う。二回見た。

遠い昔、楽園が極寒の地となり、他の動物たちが逃げ出した後に残った種、皇帝ペンギンの過酷な一年の映画。別に演技指導が入っているわけではなく、自然の皇帝ペンギンの夫妻に、それぞれ男女ナレーションと音楽を付けただけだが、これが、意外にストーリー性があって引き込まれる。ひたすら、餌場から産卵場所まで歩き続け、長い冬の寒さを耐え、三ヶ月に及ぶ空腹に耐え、夫婦が交互に片道20日かかる海まで餌をとりにいって、雛を育てる皇帝ペンギン
そのうち、一つでも間違えると雛は育たず、すべてが無駄に終わる。間違いがなくても、外敵に襲われ、雛どころか親が命を落とすこともある。そして、親が命を落としたときには、孵った雛も餌を食べれずに死んでしまう。一方、雛が死んでしまったことで狂気にかられ、他の親鳥から雛を奪おうとする親も現れる。

だが、過酷な生活のなかでも、救われるシーンがいくつかあって、ちゃんと「ほっと」できる。長い冬が去って、太陽が地平にそってゆっくりと移動する最初の日。長い旅から妻たちが帰ってくるときに、一斉に顔を上げる夫たち。頻繁にカップルや仲間で集う親ペンギンたち。

ナレーションはフランス語版と日本語版。フランス語版のほうだと、ねっとりした話しぶりからペンギン夫妻が30代後半の中年夫婦。日本語版だと妙にハキハキしていて二十代の若夫婦に見えるのが不思議。