ヒトラー 最期の12日間

ヒトラー~最期の12日間~スタンダード・エディション [DVD]

ヒトラー~最期の12日間~スタンダード・エディション [DVD]

175分。三日に分けて見た。私が借りたDVDはエクステンデットエディションで、映画館で見たときより長かったらしいが、どこが増えたシーンなのかはわからなかった。映画館ではひたすら展開に圧倒されていて、場面場面に目をやるどころではなかったからかもしれない。そもそも、劇場公開版も155分あったのだ。
あと、音声はドイツ語のみ、字幕は日本語のみ、というストロングスタイルでちょっと驚いた。そりゃ、たとえば石井康嗣の声でしゃべるヒトラーが見たかったわけではないが、映画のDVDとしては質実剛健

しかし、映画は面白かった。映画館で一気に見たときには、ひたすら廃墟となったベルリンでの市街戦の混沌と、地下要塞司令部の人々の狂気と、どんどん進行していくヒトラーの病人っぷりだけが印象に残ったが、少しずつ、家のテレビで見ることで、わりと冷静に一本の映画として鑑賞できたような気がする。

こうやって分けてみると、脇役たちが印象に残るように色々工夫されてることに気がつく。基本的に、どの登場人物も、それが誰で、どのような立ち位置に居る人物なのか、説明されているし、一回でてくるとその後定期的に出番が巡ってきて伏線を回収していくし。最後には「それぞれのその後」までついている。とはいえ、主要な登場人物についての説明もさほど多くないので、「映像の世紀」かなんかでヒトラーとゲッベルズとシュペーアくらいは誰なのか再度押さえていないと、話がわからんのではないかとも思う。

一見、混沌とした話だが、ゲッベルズのような「煽動政治家」と、ヘルムート・ヴァイトリンクのような「まともな軍人」の立ち位置が最後までほとんど変わらないので、映画としては見やすいのだと思った。まー、だからこそ史劇として見た人からは色々批判されたわけだが。

あの実直そうな人が実は冷酷な大量殺戮者で、みたいな展開があるともっと混沌とした話になると思うのだが、そういう意味での意外性はないので安心して「まともな人たち」に感情移入できる。ひたすら陰惨な展開のなかに、一瞬の平穏な場面があって、緩急がついており、三時間を中だるみなく見られるのが凄い。