まひるの月をおいかけて

まひるの月を追いかけて (文春文庫)

まひるの月を追いかけて (文春文庫)

恩田陸中年女性旅情サスペンス。夫と離婚してバツイチになったばかりの主人公は、数度しか会ったことのない腹違い兄が失踪したときき、その恋人とともに、失踪した兄を捜して奈良への旅行に出かけることになった。

とにかく、恩田陸作品だけあって、ひたすら奈良の観光名所を歩きます。歩きながら、いろいろな話をします。そこから、過去にあった出来事がかたられ、それが違う方向から語り直され、関係のない人間関係が語られ、それが掘り返されて新しい見方を提示され……「夜のピクニック」「茶色と黒の幻想」みたいな感じ。

主人公の「誠実であろうと思っているが、自分がそんなに誠実な人間ではないと本心では気がついている」という描写も、俺の自己認識に近くていいなあ。

だが、前に書いた二つに比べると、あまり面白くはなかった。やはり恩田陸は謎がスッキリとけるタイプのサスペンスを書くのに向いていない。なんでこう、毎回毎々、種明かしのところでがっかりするんだろう。