ゲド戦記

ゲド戦記 [DVD]

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初見。いやあ、「もののけ姫」以降の宮崎映画って、自分の中であんまり評価していなかった気んだけど、「千と千尋」とか「ハウルの動く城」って面白かったんだなあ。ということを再確認した。あと、後半の城のシーンをみていて「ICO」みたいだなあ。と思った。というか、宮部みゆきつながり(同じ頃に映画化された女性作家のファンタジー小説であり、主人公の男の子の父殺しであるとか、竜であるとか、影との戦いとかの共通点があるのだが)で、キャストとキャラクターデザイン以外はひどい出来だと思った映画版「ブレイブストーリー」の方がアニメとして面白かったような気がしてならない。全然関係ないけど、「ブレイブストーリー」のキャラデザって千羽由利子だったのか。そら、デザインがいいはずだ。

なんだろう。以下、とりとめなく。

  • 台詞が過剰。物語のテーマを台詞で説明しすぎだ、という評論を見た覚えがあったけど、普通の場面の台詞も過剰だと思った。台詞単体だと筋が通らないんだけど場面の流れと芝居がつくから何となくニュアンスが分かる、という富野語の存在は貴重だと思う。例えば「あいつは来たか? まだか、遅いな」は「まだか?」あるいは「遅いな」で良いんじゃないか。もっと芝居の力を信じて良いと思う。
  • その反面、説明されている内容がよく分からないことや、オチのないことが多い。冒頭の王様の話から始まって、ゲドの話もアレンの話もテルーの話も、言葉を尽くして説明されたハズなのに結局よく分からなかった。王様と爺さんが話していた各地の異変は結局どうなったんだ。
  • よく言えば綺麗な一枚絵が多いが、悪く言えば環境映画のような特にイベントのない風景と、「誰かが一方向へ歩いていくだけ」とか「単に移動していることを表現しているだけ」というカットが多く、間延びした感じがする。その後すぐにゲドが来るなら、テルーはなんのためにわざわざ縄抜けをしたのだ。
  • 主人公、役に立たなすぎだろう。本当に言葉だけで説得されて翻意した主人公を初めて見たような気がする。とはいえ、「父は立派な人だ」という主人公の台詞が一番記憶に残った。宮崎吾郎監督作品でしか出せない台詞だと思う。とりあえず、最後はとっとと自分の国へ帰れ。お前、またすぐ来年とかに来るつもりだろう。ちゃんと罪を償う意思があるのか、お前。
  • 悪役が本当に悪役だった。千尋カオナシや、ソフィーの荒地の魔女に対する態度とは偉い違いだ。そういう悪党でも受容するのが宮崎駿作品のヒロインだったんだなあ。まあ、アレはアレで聖女すぎて一長一短だけど。ジブリ作品で手首が飛ぶ場面を見るとは思わなかった。
  • 「なんとかデレ」ってジブリ作品でも避けて通れない世界なのか。
  • 音楽があまり印象的な使われ方をしていなかった。「ここが盛り上がるシーンだ」といった場面で、必ず「ジャーン!ジャーン!」と音楽が鳴り始めるのは前に見た劇場版AIRみたいな演出だと思った。