回帰祭

回帰祭 (ハヤカワ文庫JA)

回帰祭 (ハヤカワ文庫JA)

ねこたま」「まさかな」で(たぶん)有名な小林めぐみの新作長編小説。

地球滅亡を逃れ、地球から四百光年だか離れた紫外線の強烈だが、かろうじて定住可能な惑星に到達した人々の子孫たちは、移民船を仮の住居として三百年に渡って定住していた。しかし、中央コンピュータの故障により、出生率は9:1と男の子ばかり産まれてくる状態が続いており、女子と女子に夫として選ばれた男一人のみが残り、他の男の子たちは全員地球へ向けて「回帰」するという伝統ができあがっていた。というわけで、「回帰祭」という地球へ帰る船が出航するイベントの直前、女の子に一目惚れした主人公たちがウロウロしていたら、いつの間にか移民船の秘密に行き着いてしまうという話。

この話の主人公って他の人物たちが避難場所と位置づけている惑星ダナルーへ定住しようと思い、「地球でも移民船でもない、どこかへ帰りたい」と度々語るアツだよなあ。恩田陸の「六番目の小夜子」の主人公を明るく前向きな小夜子の友人、花宮雅子だとずっと思っていたら、いつの間にか根暗で皮肉屋で、小夜子とくっつく関根秋が主人公だと作者が語っていて、非常に驚いたんだが。作者的には、ヒマリとライカが主人公だったらどうしよう。

作中、ヒマリの兄が本当に酷い男なんだけども、クライマックスシーンの最後の最後で物陰からばっと登場してきたときは、本気で感動した。よくやった兄貴。よくぞ出番を全うした。あのまま尻つぼみに出番がないのかと思った。

終盤にあかされる真実はなんか、中盤くらいから大筋では読めているんだけども、なんか物語を収拾するのがあんまりうまくないなあ、みたいなことを思った。アツとライカが移民船の外に出て歩く中盤とか、本当に面白かったのだが。

ネタバレを語ると、オチからネウロを連想した。
俺はもうしばらくそこから発想が離れることができないのか。

次は「くらやみの速さはどれくらい」。