フルーツバスケット 19〜23

フルーツバスケット 第23巻 (花とゆめCOMICS)

フルーツバスケット 第23巻 (花とゆめCOMICS)

この世界に「永遠」はないよ。
「絶対に護られる約束」も「何者にも断ち切れない絆」も世界には存在しない。
これは、そんな物語である。


完璧に保証されている未来なんてない。どんなに失敗しないように、怖がりながら道を歩いていっても、きっとどこかで人は失敗してしまう。取り返しの付かない失敗はあるけれど、取り返しのつく失敗の方が多い。スマートになんて渡っていけない。失敗を積み重ねて、右往左往しながら、人を傷つけ、自分も傷つきながら、そうやって少しでも幸せな日々を歩いていけばいいのだ。
これは、そんな物語である。

本田透という、男の子のような名前を付けられた女の子が、幼い頃に父親と、そして四ヶ月前に母親と死別し、親戚中をたらい回しにされたあげく、人の家の裏山にテントを張って生活しはじめようとした矢先に、山の持ち主である草摩一族と出会い、一族の秘密を知ってしまうところから物語は始まり、そこから物語内時間で二年半ぐらい? の時間が流れる。
心弱い(本当に心弱いんだ。これが)少年たちは成長し、女の子たちはそれぞれの幸せと道筋を見つけ、大人達は過去を振り返って反省し、主人公は「永遠」を振り払って、先へ進んでいく。

面白かった。序盤から張り巡らされた小さな伏線に次々とオチがついていく終盤は本当に面白かった。綾女の高校時代の反省がすごく長い伏線(冊数にして12冊ぐらい前の一場面だけあった伏線の決着)だったり、その落着ぶりが良かったなあ。帽子王子の話は収集するのがあんなに大変なエピソードになるとは思ってもみなかったというか、よく引っ張ったなあ。ただ、登場人物が多すぎて(登場人物紹介の頁に20人以上でてくるって変だろ……)誰だっけ、それ、という状態になることもしばしば。みっちゃんって誰だろうとずっと思っていた。読み直してやっとグレにいさんの編集者だと分かった。

終盤の透の「でも、そんなのは詭弁ですっ」と夾の「幻滅なんてしない」→「幻滅した」は、いい場面だと思ったんだけれど、すごい文語っぽい台詞でアニメで喋ったら違和感があるよなあ、とか思った。「詭弁です」って、透はお勉強ができないタイプのキャラクターなのに、よくするっと言葉が出てきたなあ。

あと、リンの気持ちはよくわかる。そりゃ、あれだけ色々な目に直近で遭っていれば、許す気分にはならないわな。和服暮らしの可憐な人は終盤可憐になりすぎだよ、さすがにと思ったが、その可憐さをみたあとで序盤を見返すと、割と初期の頃から可憐な片鱗があったりしていいなあ。お手玉で遊んでたりするところとか、はとりに執着するところとか。実に可憐だった。