ネバーランド

ネバーランド (集英社文庫)

ネバーランド (集英社文庫)

年末の七日間、ほかに誰もいない寮に残ることになった男子高校生3人+1人。
お互いの距離感をつかめずに始まった奇妙な同居生活。
一日、一日がたつにつれて、次第に彼ら4人の持っている秘密や、学校での日常では隠蔽されてきた思いが明らかになってくる。


恩田陸の書く男子高校生は理想像ではあると思う。
なぜ、恩田陸の書く女性はあんなにも恐ろしく、男たちは不甲斐ないのか。
本書の解説に、「恩田陸の一冊目、二冊目はホラーであったが、この小説は違う」という旨の文章が書かれていたが、ネバーランドはホラー小説であると思う。


また、本書は恩田陸の小説としては、これまっで読んだ中では珍しく、幕切れが美しい。
とはいえ、ホラーの味付けは中盤までが最高潮だった。
闇夜で語り手の高校生が見る紅い指先には鳥肌が立った。


(こうした恐怖感に、本小説では非常に俗な説明付けをしていく。
 そのために、物語は中盤からちゃんと解決されていって、ちゃんと完結するのだが、逆に物足りなさも感じる。
 読後感のよさなどうっちゃって、読んでいて謎の伏線の中に埋もれるようになっていくのが恩田陸の魅力だと思う)


本書のtitle「ネバーランド」は、主人公たち、高校生たちが住む閉じられた世界であり、そこは彼らにとって帰るべき家であり、同時にやがて大人になって去るべき世界である。
私は学校生活を楽園的に感じた人間ではなく、どっちかというと那州雪絵の「ダークエイジ」のように、「なんでこんなに学校生活は辛いんだろう。今がこんなに辛いのに、大人になったらどうなるんだろう」とか思っていたクチなので、正直本書の学校描写には若干ついていけなかった。

那州雪絵といえば、同様に男子高校生の寮生活をテーマにした「グリーンウッド」の作者だけに、それがここまで対照的な世界観を持っていることに驚く。

ここはグリーン・ウッド (第1巻) (白泉社文庫)

ここはグリーン・ウッド (第1巻) (白泉社文庫)

しかし、よく考えると高校生活を「暗黒時代」と書くことも、「ネバーランド」と書くことも同じように、そこには濃密なノスタルジーが漂っている。


これは遠い昔に学生時代を過ぎてしまった、そういう読み手のための小説なのだ。
それが暗い過去として回想されるのか、輝かしい時代として回想されるのかの違いはあるにせよ。