ディック傑作集〈2〉時間飛行士へのささやかな贈物

ディック傑作集〈2〉時間飛行士へのささやかな贈物 (ハヤカワ文庫SF)

ディック傑作集〈2〉時間飛行士へのささやかな贈物 (ハヤカワ文庫SF)

いびつな毎日を送っています。


フィリップ・K.ディックは有名すぎるSF作家ですが、自分を振り返ると長編「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」と、「高い城の男」しか読んでないよーな。
そして、正直どっちもあんまり好みじゃなかった罠。
「高い城の男」はとくに読んでいて、だんだん朦朧としてきたし。


その点、短編集はいい。
「父さんに似たもの」から「自動工場」までの三篇を読んだが、どれも面白かった。


とくに冒頭の「父さんに似たもの」は、さっきまでガレージにいた父親がなぞの生物にのっとられていて、という話だが、不気味さ、クライマックスで目にする「自分自身に似たもの」の登場は、恩田陸のホラーを思い起こさせる。


二作目「アフターサービス」は、ごく普通の古ぼけたSF小説だが、1963年が「未来のこと」として語られる展開には、おおっと思った。いや、当時にしてみりゃ当然のことだし、単に経年劣化しただけかもしれないが。


三つ目「自動工場」は水爆戦争後の(今から見ると)過去。
戦争前に作りはじめた自動化された工場が戦争後にも活動を続け、人類は自分で働くことができず、工場に養われながら生きていくほかなくなる。
そこで、工場に反抗する人間たちは自動工場の停止を試みる。


自動工場は人間にミルクを渡し、食料を渡して養う。
人間たちは、自らの手で工場生産を行いたいことと、自動工場が資源を使い尽くしそうなために、自動工場を停止させようと立ち上がる。


無限に単純な行動を繰り返す機械が、資源を食いつぶすという発想は、非常にバインバインな感じだが、私などはSFにおいて資源を食いつぶすもの=人間という公式が刷り込まれているため、逆に目新しく思える。
もっとも、この短編での自動工場は人間を戯画化したものなので、別段これでいいような気もするが。