麦の海に沈む果実

麦の海に沈む果実 (講談社文庫)

麦の海に沈む果実 (講談社文庫)

先にネタバレ

ウテナ*1だと思っていたら、実はアンシー*2だった。という話。
というか、比喩じゃなくて、本当に文字通りそういう話なので、
そのまんまやんけ、という突っ込みは不要。

オチ以外は

全15章あるうちの、オチ以外は全部面白かったんだよなあ。
『三月は深き紅の淵を』が今まで読んだ中では、一番すきなんですが、
14章まではそれを超えるかと思って読んでいました。


でも、この最後の最後で駄目なところも含めて、恩田陸のパターンをすべて、
踏襲している作品として楽しめました。
それでこそ恩田陸というべきか。


『三月は深き紅の淵を』の4章で構想されていた、湿原のなかに立つ
寄宿舎学校に二月の最後の日にやってきた転校生理瀬。
おのおのに因縁のある経歴を持つ生徒たちで構成されるこの学校には、
二月にやってきた転校生は学校に破滅をもたらすという伝説があり、
理瀬は転校直後からさまざまな事件に巻き込まれていく。


暗いくらい、いつ果てるのか分からない憂鬱な学生時代。
以前『ネバーランド』を読んだときに『グリーンウッド』を連想したとすれば、
まさに恩田陸版『ダークエイジ』。


お互いに苗字を使わず、名前で呼び合う生徒たち。
十二人のメンバーで構成される『ファミリー』。
男女の姿をとる学校の支配者「校長」。
学校のなかで、次々と消えて、あるいは明確に死んでいく生徒たち。


秘密の花園』『若草物語』『赤毛のアン』に触れるあたりのオタクっぽさ。
寄宿舎の登場する児童文学におけるお約束。


理瀬の部屋の屋根裏に隠されていた『三月は深き紅の淵を』。
バラ園の死体。


そして、終盤での理瀬の告白。


でも、この終局は、少女が学生時代という牢獄を出て行くようでありながら、
実は完全にそこにとらわれているのでありまして。
革命もなにもあったものじゃない。


序盤で語られた面白そうな設定も、中盤以降でてこないのが残念です。
というか、ファミリーの影が薄かったのには驚きました。

*1:牢獄を崩壊へ導く異分子

*2:牢獄を生み出している存在そのもの