黄泉がえり

黄泉がえり スタンダード・エディション [DVD]

黄泉がえり スタンダード・エディション [DVD]


映画館で見た「この胸いっぱいの愛を」が、役者の演技はいいんだけど、
原作との乖離と脚本のできが「はてな?」な感じだったので、
見ていなかった「黄泉がえり」を観てみた。


観る方の僕は、梶尾真治の「黄泉がえり」と恩田陸の「月の裏側」がすでに
かなりごっちゃになっているので、ちょっと自信がないんだけども、
主人公の草なぎ剛演じる東京から故郷に戻る形でやってきたお役人が、
原作に登場しないくらいで、おおむね原作通り映像化されているのかな?
と思う。たぶん。


いや、原作からモチーフだけ持ってきた黄泉がえりとか、
重要人物だったキャラクタが黄泉がえりじゃなくなっていたりとか、
そういうのは散見されますし、原作ではあったSFオチはなくなってますが、
「この胸いっぱいの〜」よりはずっと原案に近いのかな?


この映画が公開されていた頃におすぎが「恋愛映画になっていた」と
コメントしていたのを覚えているんだけど、あれこれ改編されつつも、
梶尾真治の原作と大きく離れてないように感じるのは、いろんなパターンで、
黄泉がえり」が恋愛とからめて映像化されているからかな。


とはいえ、この映画を観ていて辛いところがあって。
それは何かといえば、八割方は主人公である草なぎ剛


三十代に手が届く年齢の役人とは思えないほど「常識的判断」に乏しく、
つっこみを入れたくなるような行動を連発するわ。人の話は聞かないわ。


本人の演技力のせいじゃなくて、多分に脚本が悪いと思うんだけど、
この人の行動のせいでまったく後半の「泣き所」が感動できなかったです。


あと、映画のなかでは最後まで「黄泉がえり」がなんなのか、解説されませんでした。
あんなんで本当に調査団が帰っちゃって良かったのか?
なんか、「黄泉がえり」のスケール自体も小説版よりずっと小さい(知事とか出てきませんし、役場の混乱もほとんど描写されませんでした。ニュースにもなってません)ため、原作にあったSF味はほとんど無くなってしまってます。


僕は原作改編してても、エッセンスが残ってるから納得できるのですが、
スケールの小ささは最後まで尾を引いていて、なんで最後にコンサートで、
あんな大渋滞になるのか映画版だと説明されてなかったりします。


調査担当の主人公が人の話を聞かないで自分のことばっか考えて行動してたから、
本来集まるはずの「黄泉がえり」の原因情報が集まってないいのだよな。
小説「黄泉がえり」のバッドエンドバージョンってことで。