DQⅠ編・前半

閑話休題:歴史の歴史


昨日の続き。
DQⅠ、Ⅱ、Ⅲには、ファミコン版のあとMSX版、ゲームボーイ版、
SFC版、iアプリ版とあるわけだが、僕はファミコン版しか遊んでない。
そんなこともあって、ファミコン版が元の歴史書だったと解釈している。


SFC版などでは、「ふっかつのじゅもん」はなくなっているわけだが、
これはアレフガルドおよび各国の国王が「じゅもん」などというオカルティズムに
手を染めていたことを後世になって隠蔽したのが理由であることは言うまでもない。


同様にⅡの王女の髪の色が紫(濃紺)から金髪になったのも、実際には紫だったのにも理由がある。
実際には勇者ロトの子を生んだのが、彼の仲間だった濃紺の髪の女戦士であり、彼女の遺伝形質が発現しただけのことである。だが、問題は彼女が勇者ロトの愛人に過ぎず、その子供が私生児だったことだ。
一応は勇者ロトの正妻は、仲間の内の女賢者であり、その家系が嫡流ということになっており、後世にロト王家が建国されたときにも、この家系の出自だと自称したが、ムーンブルクにはとくに濃紺の髪の毛の子供が生まれる事が多く、ローレシア王家の人間にまったく魔法の才能が伝わらないなど、「竜王と戦ったロトの子孫」が女戦士の家系であることは王家に近い人間たちの間では公然の秘密だった。
とはいえ、ロト王家の人間は民衆の前にでるときには鬘を着ける事が多く、金髪のローラ姫の肖像がロト王家の時代に流行した印象派たちの代表的な作品だったこともあって、専門家以外の間ではムーンブルクの王女は金髪だったことになってしまっている。
まことに嘆かわしいことである。

竜王の乱

内乱の発生


さて、勇者ロトが没してから二百年前後、十世代ほどの時代が流れた。
その間にアレフガルド絶対王政が敷かれたことは昨日書いたとおりである。


このころ、幼子として竜王の城に着任した「竜王」は*1成人し、二つの面での指導者となっていた。
一つは国教としてのルビス教に対して、元来あった人格神的な側面をもった精霊ルビスを個々人が私的に信じる自由があるはずだ、という宗教指導者としての側面である。この側面では、彼は、とくにアレフガルドの地方で人間からも指示を受けていた。
もう一つは、彼がゾーマ死後に混乱していたモンスターたちを統率する立場にあったことである。モンスターとはいえ、龍や魔法使いなど知性のあるものもおり、ドラキーやスライムのような低級モンスターですら人語を解したように、完全に知性のないものはいなかったことは記憶しておくべきである。


きっかけは、アレフガルド南方の都市ドムドーラが、国王ラルス十六世に対して宗教上の自由を求めたことだった。
ラルス十六世の王権は国教会に由来するため、これは重大な反逆行為である。
速やかにラダトームから出撃した軍勢がドムドーラに襲いかかった。ドムドーラ竜王に支援を求め、両軍はドムドーラ近郊で戦いを繰り返すことになったが、結局はドムドーラ竜王軍は破れ、ドムドーラは国王の軍隊によって焼き払われた。

開戦直後


この戦禍をラルス十六世とラダトームの官僚たちは、竜王軍の仕業と喧伝した。
が、同じく南部のメルキドドムドーラと政治的立場が近かったこともあって、この宣伝を無視。街の入り口をゴーレムで守り、徹底抗戦の構えをとった。
メルキドのゴーレムは戦力として有用だったため、竜王軍に技術が供給され、ストーンマンやゴールドマンが作り出された。


また、リムルダール島は、本土との間をつなぐトンネルを竜王が武力制圧した
こともあって、積極的ではないものの竜王派となった。


後世にはもちろん敗北した竜王に荷担したことは多くの人間が認めなかったし、
後述する理由で竜王派の人間たちはアレフガルドを去ってしまったため、
ラルス王家の「竜王の圧政を堪え忍んだ統一国家」という政治宣伝が生き残って
しまったが、実際は異なる。
アレフガルドは北西半分のラダトームを中心としたラルス王家と、
南東半分の竜王派に二分されたのが事実である。


こうして国家を二分した戦いで、ラルス王家軍はメルキドの包囲と、
沼地の洞窟を通ってアレフガルド本土に橋頭堡を得ようとする竜王軍への対応に
追われていたが、もともと常備軍としてのスケールがあまり大きくなかったため、
ラダトームから遠路メルキドを落とすには補給が足りず、
竜王軍から沼地の洞窟を奪還することもかなわず、戦線は膠着した。


そのさなか、比較的防備の薄かったラダトーム城を竜王軍の精鋭部隊が海路から襲撃、
ラルス十六世の暗殺をねらったが果たせず、庶子ローラ姫などを誘拐するにとどまった。

ロトの子孫の登場


前述のラダトームへの急襲や、竜王軍の海上戦力による海路の寸断などによって、窮地に追いつめられつつあったラルス王は現状を打開する方策として、数多くの傭兵隊長を雇った。


その内の一人が、ロトの子孫である。
*2


彼は当初十数人の兵士を引き連れるのみだった。
彼の率いる兵士の頭数がHP、魔法使いの頭数がMPであることは、
天地を喰らう」などの例を出すまでもないことであろう。
*3


ロトの子孫は、当初国王軍の前線の背後で活動をしているだけだったが、
やがてゴーレムを倒してメルキドを開城させ、沼地の洞窟を激戦ののちに奪還。
国王軍は逆にリムルダール島へ上陸し、竜王を孤立させることに成功する。
また、沼地の洞窟での戦いのおりに、誘拐されていたローラ姫を救出している。

ローラ姫とは


ローラ姫は元来数多くいる庶子の一人であった。
ローラが国外へ出たのにラルス十六世の後もラルス王家が存続していることからも明らかである。竜王軍がラダトームを襲ったときに彼女がさらわれたのは、単純に警護が厳重でなかったからである。
また、竜王にさらわれた王族は彼女一人ではない。


だが、竜王軍のもとで教えられている「新しいルビスの教え」に感銘を受け、
沼地の洞窟では竜王軍の一員として戦陣にたっていたところを、ロトの子孫に
捕らえられたところから彼女はローレシアの国母への道を歩み始める。


ロトの子孫は彼女をラルス十六世のもとに護送したが、ラダトームでの彼女は、
反乱分子として詮議され、その後は常に国王の監視下に置かれた。


この状況でローラ姫はなお政治的な活動を密かに行い続けた。
後に「王女の愛」と呼ばれるロトの子孫との綿密な書簡集がそれである。
戦争終結まで、ローラはロトの子孫へ宮廷内の状況を連絡し、
逆に国王の監視が緩むにつれて宮廷内へ、ロトの子孫の影響を強める活動をした。

*1:トートロジーのようだが。実際には竜王は称号であると思われ、別に個人としての名前があったものと思われる

*2:国民軍が創設される前の、絶対王政における軍隊の主力は傭兵だった。

*3:用語はへいしポイント、まほうつかいパワーの略である。ロトの子孫は宿に逗留するごとに新しい兵士や魔法使いを雇い、一定数の兵士を集めるまでは動かなかったといわれている。彼は賢明にも自分が統率できる人数を冷静に見極め、それを兵士の数、魔法使いの数として自らに制限した。