ねじの回転
ねじの回転―February moment (上) (集英社文庫)
- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/12/01
- メディア: 文庫
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昭和11年2月26日。
東京。2.26事件の前後数日間を舞台としたSR小説。
最後の最後で、物語世界を崩壊させて終わる典型的恩田陸のSF小説。
だが、それがいい。
歴史の遡航技術により、歴史の改変が可能になった近未来。
だが、一つの歴史が改変されたことから、想定されなかった歴史の歪みが発生し、
治療不能な疫病が蔓延する世界になってしまった。
さらなる悲劇をさけるためには、歴史を「史実」通りにもう一度進め、
歴史の歪みを押さえ込む必要がある。
歴史遡航技術を管理する国連の職員たちは、事件を史実通りに進展させるため、
東京の一角に身を潜めて、事件の動きを注視していた。
国連職員たちに説得されてその時代に戻った青年将校らは、
経験した通りに物事を進めようとするが、さまざまな不測の事態が発生し、
その数日間はなんども「巻き戻される」。
しかし、やがて国連職員たちの関知できないところで、
歴史は少しずつ「史実」とは異なる展開にずれていってしまう。
「蒲生邸事件」も2.26とタイムトラベルだったなあ。なにか縁が?。
石原完爾、安藤輝三、栗原安秀ら軍人三人が、恩田陸作品の典型的な
思弁系青年の類型として書かれているのは、歴史小説としては微妙だが、
事件の推移や背景は非常にわかりやすく書かれていた。
雪の降る四日間を繰り返し演じることになる展開、
繰り返す度に少しずつかわっていってしまう筋書きなど、
この手のSF話が好きな私は非常に楽しめた。
でも、やっぱり最後は「結婚式に石の雨」。
すべてご破算にして終わるのが、作者のSFの常なのだが、
余韻が残る終わり方になっているのが良いことなのかどうか。