ウォーターシップダウンのうさぎたち(下)

ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち (下) (評論社文庫)

ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち (下) (評論社文庫)

絶版文庫本。神保町の古書店街を探し回っても復刊されたハードカバーしかなかったので、e-bookoffがなかったら、きっと手に入らなかったと思う。

面白かった。これが30年前の小説かと思えた。もともと、ゲーム「Forest」に登場したのが気になっていたくらいだったのだけど、読んでみて良かった。おいらが、群像劇が好きだから、面白かったのかもしれないが、うさぎの群れのリーダー、ヘイズルを主人公にして、リーダーが持つ悩みや葛藤から逃げずに物語られていたのが良かったのだと思う。
意外と、ラノベにしても、普通の小説にしても、「リーダー」を主人公にした、そういう作品は少なくて、なんだかしらないけど、創作物のなかの「リーダー」は腹黒かったり、内面が見えなかったりする奴ばかりみていたけれど、ヘイズルは個人として(兎だけどな)葛藤しつつ、リーダーとして役割を果たして頑張る、リーダーとして成長していく主人公というのが斬新に見えたのだと思う。

脇役たちも実に魅力的で、リーダーを補佐しつつそれぞれの性格的な弱点を見せる面々は、アルスラーン戦記司馬遼太郎の戦国ものを思わせる勢いだった。歴戦のピグウィグ、知者ブラックベリ、語り部ダンディライアン、予言者ファイバー、寡黙なバックソーン、経験豊富な忠臣ホリー、建築家ストローベル、小姓ピプキン。シルバーに、ブルーウェル。渡り鳥のキハール。

あと、エル・アライラーの伝説の類。もともと、FORESTで引用されてたのは、エル・アライラーとインレの黒ウサギだったのですが、期待以上に良かった。なにより、最後の方のシーンが良かった。

そして、エル・アライラーは多くの民を守り、ずっと幸せに暮らしたのです。インレの黒ウサギの家臣に迎えられるその日まで。