字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ (光文社新書)

字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ (光文社新書)

久しぶりに戸塚に出かけたら、駅の裏側が一面の荒野になっていた。
再開発ってこんなに豪快にやるものなのか。あのごみごみとしていた町並みが、跡形もない。

で、有隣堂で直感に頼って買い物。通勤電車の往復で読めた。
字幕屋のおばさまの書いた新書本。字幕について、と思わせつつ、日本語についてかなりざっくばらんに書かれたエッセイ集だった。筋道が通った「論」でなく、個人の感性に因る部分が大きいな、とは感じたが、テレビや文章での「!」の多用を苦々しく思ったり、「比ゆ」や「範ちゅう」のような混じり書きを嫌がったり、といった言葉の一語一語へのこだわりに、わりと共感できたので面白かった。ブログに書かれているのは、ひとに読ませることを意識していない文章であり、量はすごいが質はたいしたことがない、というような部分も含めて。

字幕屋の立場から見た「ロード・オブ・リング」の字幕騒動や、ドフトエフスキーの『白痴』を字幕の中に出すまでの戦いぶりなども面白かった。
この人が、あの『ヒトラー最期の十二日間』の、「私はSSの大佐ですが、国防軍の軍医として、その命令を拒否します」みたいな、嫌になるほどストロングスタイルの字幕を書いたのか。あの映画、まったく「SS」とか「国防軍」について解説しなかったなあ。と、最近BSで見たのも高評価に影響しているんだと思う。