まほらば 1〜12

まほらば(12) (ガンガンWINGコミックス)

まほらば(12) (ガンガンWINGコミックス)

アニメ化された漫画を読もうキャンペーン。
軽い「らぶひな」フォロワーだと思って読み始めたら、意外と胸を突く話が混ざっていて良かった。サブキャラクターたちへの手厚い扱いや、ラブコメ要素の正面突破ぷり、そしてキレイな終わらせ方と、どれをとっても「らぶひな」より良くできている。たまに読み返そう。絵柄は「ぼく、オタリーマン」の人みたいだが、話は良い。

上京して専門学校に通う絵本作家志望の主人公は、親戚のやっているというアパートに泊まり込むことになった。だが、その主人公がころがりこんだ鳴滝荘の十人は大学生から小学生までの女性ばかり((人妻とおっさんもいます))、その上管理人は女子高生で、実は主人公と幼いころの因縁があるのだった。これでヒロインが多重人格でなかったら、ほぼ「らぶひな」の初期設定だ。

序盤から、2〜3巻までのメインヒロイン梢の多重人格で引っ張っていたのだが、それが力尽きてサブキャラに話を振るようになってから、めっぽう面白くなった。で、水無月家編の小夜子の啖呵あたりから本格的に面白くなってきた。珠美の過去エピソード、珠美と主人公のやりとり、見開き3頁におよぶ告白、サブキャラクターたちのエピソード収集を経て、ヒロインの人格統合まで、脇役たちのエピソードを豊富に展開しつつ広がっていくのが良かった。いろんな障害に逃げずに立ち向かっている主人公が、ハーレム状態の作品にもかかわらず、ヒロイン一筋なのが非常に好感が持てた。ヒロインの元人格はかなり性格付けと役回りが薄いような気がするが、本当に人気投票一位だったのか?。

脇役のなかでは、オカルト部部長がお気に入り。卒業するときの台詞とか、ふと出てきた「そんな魔女ゴッコなんていくつになってもできるでしょうに、この二度とない季節をギセイにしてまで、そんなことしてていいんですか?」「もっと他にすることがあるでしょう。恋愛とか、恋愛とか、恋愛とか」「私が青春をギゼイにしているように見えるとしたら、私はそう見える分だけ充実した愉悦の時を過ごしているのですよ」「私はそんな心から熱中できるものに出会えたことを、嬉しく思っているのです。ただそれが人と違っていただけの話」

あと、灰原のオッサンの最後にとっておかれたエピソードから大団円までの流れ。逃げずに、ヒロインの多重人格の原因を語っているのが良く、かつ主人公とヒロインの関係が、「過去の因果に因るもの」でなく、「現在、そしてこれからをともに過ごしたい」というものだったのが良かったんだと思う。

登場人物の誰もが、黒々としたものを内面に抱えつつ、平和に仲良く暮らしている世界観が良かった。一見ハーレムものなのに、根暗でうじうじと悩む登場人物ばかりなのが本当によかった。