亡国のイージス

亡国のイージス

亡国のイージス


日本人は戦争が何かを知るよりも先に、映画とは何かを知った方がいいと思った。


俳優人は豪華だし、特撮も見事であります。
ただ、それだけお金を使った結果できあがったのがこれですか。
なんてもったいない。


おかしいな、期待してたからこう思うのかな。
ひょっとしたら普通にみたら面白いのかもしれない。
以下はネタバレが多いので、気になる方は飛ばしてください。

ここからネタバレあり


とりあえず、途中でなんどか失笑しそうになりました。
だって、「へぼいホワイトアウトなんですもん。


ホワイトアウト」は、雪山が舞台の「ダイハード」ですが、
この映画はイージス艦を舞台にした「ザ・ロック」です。


どっちにしてもハリウッド映画からパクった映画ですが、
この映画ではイージス艦であることが、まったく役立っていない。


主人公の真田広之が「この船のことで知らないことはない」と呼ばれてるのに、
その能力をテロリスト相手の逃走&戦闘でまったく活用してないんだもの。
最初の「実は最近修理したハッチがあって」は、後のシーンへの伏線だと思ったのに、
そういうことを一切合切やらないんだもの。


それにしてもあのマイケル・ベイ監督の映画をパクるなんて、なに考えてるんだか。
というか、マイケル・ベイの「アイランド」は絶対に避けようと思って映画を見に行ったのに、何が悲しくてマイケル・ベイの「ザ・ロック」の日本版を見なくっちゃならないんでしょうか。


ザ・ロック」は登場人物が間抜けながら、展開には迫力があるのですが、この映画は編集が最悪だし展開がご都合主義。


たとえば、最後の寺尾聰勝地涼のシーンの前に、寺尾聰と息子が出てくるシーンがもっと必要だと思うんです。
寺尾聰勝地涼の顔みるのは始めてのはずなんだから、突然息子と重ねるのは変でしょう。
チェ・ミンソは確かに見ほれましたけど、役自体はいなくてもいい役なんだからまるっきり省いて、寺尾聰の前に中井貴一がやってくる場面とか映像化すればいいのに。


中井貴一がかっこよくないし、真田広之は活躍しないし、佐藤浩市は役に立たない。
そもそも、中井貴一寺尾聰の部下たちが何のために大勢いるのかわからないし、登場した瞬間はやる気のない総理大臣が、銀河英雄伝説アイランズ国防委員長のように突如働き出すのもよくわからない。


銃で撃たれて即死する人と、撃たれてからも元気に動き回る人が、見え見えのご都合主義によって選り分けられているのが、なによりよくわからない。
なんで寺尾聰は撃たれてからあんなに元気なんでしょう。彼の部下たちはあんなにあっけなく死んでいくのに。


いいところ。
勝地涼の回想シーンは良かったし、佐藤浩市岸部一徳の会話も、少しは良かったかな?。
まあ、確かに勝地涼の回想シーンは話の展開から浮いてるし、佐藤浩市岸部一徳も、欺瞞に満ちた平和と真実としての戦争を語る「パトレイバー2」の後藤と荒川の会話を水で3倍に希釈したような内容だったけど。


でも、あんなに総理大臣が有能なのなら、日本国には何も問題がないような気がします。
佐藤浩市率いる特殊機関もとくに悪いことしてないわけで、「ザ・ロック」の大統領やアメリカ情報部程度に役立たずだったり後ろ暗いところがあるなら、寺尾聰の憂いにもまだ説得力があるんですが。


金返せ。

亡国のイージスを見ようかと迷ってる人への追伸


当初ルサンチマンの赴くままに書いたら長くなりすぎたので、半分に削りました。


原作小説を未読なので全部わかっては居ません。
原作を知っていたら、面白いのかもしれません。
その可能性はありますし。


また、私の好きな「パトレイバー2」の亜流に見えてしまったため、
私の評価が辛くなっているのかもしれません。


でも、戦争映画を今見るなら「ヒトラー最後の十二日間」を見た方がよっぽどマシだと思いました。


「あんたが正義の戦争を嫌うのはよく分かるよ。
 かつてそれを口にした連中にろくな奴はいなかったし、
 その口車に乗って酷い目にあった人間のリストで歴史の図書館は一杯だからな」


でもなんか、「亡国」というタイトルに惹かれてるのであれば、「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」でも見て心を入れ替えましょう。


「オレの人生はつまらなくなんかない!」