盗まれた町

盗まれた街 (ハヤカワ文庫SF フ 2-2)

盗まれた街 (ハヤカワ文庫SF フ 2-2)

久々に小説を読んだが、面白かった。
恩田陸「月の裏側」は結構好きで、それがこの小説のオマージュだっていうのは知っていたが、ずっと読んだことがなかった。このあたりは、笹本祐一や梶井真治のアレンジを先に読んでて、去年までオリジナルを読まなかった「ジェニーの肖像」に経緯が似ているような気がする。

50年代のアメリカ。ロサンゼルスにほど近い田舎町。
開業医をやっている28歳の主人公(バツ1)のもとに、旧知の女友達から奇妙な相談がよせられる。彼女の叔母が、叔父が叔父ではないと言い出した、と。姿形は似ているし、記憶もクセも似通っているが、どこか本人とは違うのだ、と。それが田舎町の終わりの始まりだった。

「月の裏側」を先に読んだせいか、後半、主人公とヒロインの二人が逃げ道がなくなった状態からどうなるのか、非常にスリリングだった。なにしろ、「月の裏側」では○○○○○○だから。あと、エラリー・クイーンのライツヴィルものが好きなので、アメリカの田舎町の描写は結構好きなことを再確認した。翻訳が若干古くさいが、映画化にあわせて妙な翻訳していない辺りに好感が持てた。