ソード・ワールド短編集 へっぽこ冒険者とイオドの宝


巻頭の短編は、十年ぶりに「サーラ」の続きです。
長かったなあ。


その間に妖魔夜行が終わってて、「サーラ」の後で始まった山本弘のシリーズものがあらかたもう終わってる、っていう。


でも、意外と面白くてびっくりした。
サーラってつくづくオブラートに包んだ部分が薄く、悪く言えば露骨。


で、その後は「サーラ」の短編で示された「イオドの宝」に関するリレー小説。
やー、こっちは本当にびびりました。


最後まで読んでいたソードワールド小説が「デュダ」、短編集が「戦乙女の槍」だったこともあって、ソードワールドの世界観って、米田仁士とか草磲琢仁の挿絵でイメージしてたんですが、何時の間にこんなに萌え絵が氾濫した世界になっていたんだー。
まあ、この世界観はこれで、安心して読めるっていう点においては良いことだと思うんだけど。


挿絵から離れてリレー小説に戻ると、間に新人二人が挟まって、最後が清松みゆき氏なんですが、えー、出来不出来はともあれ、制作者間の意思疎通がよくとれていないリレーの典型といいますか。


こんな感じのリレーシナリオって、初期にはよくあったなあ。


編集側による制約なんだろうけど、新人二人が「サーラ」で提示されたテーマを全く受け止めないで、それぞれ自分の主人公パーティーと「イオドの宝」というフレーズだけを登場させてリレーを繋ごうとしたため、そのしわ寄せが全部最後の清松みゆきに行っているっていう。


最後まで続けて読むと、前二人の間に発生している設定の齟齬に理由をつけ、それぞれの短編で登場したサブキャラクターを受け止め、当初のテーマまで受けて一個のリレー小説を完結させつつ、前二者の出した設定をあっさり否定してみせる等、清松みゆきの技量と腹黒さが際だちます。


古き良きリレーの味わいがして良かったです。