碇シンジ育成計画 1〜3

新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画 (03) (角川コミックス・エース)

新世紀エヴァンゲリオン 碇シンジ育成計画 (03) (角川コミックス・エース)

以下には漫画『碇シンジ育成計画』『鋼鉄のガールフレンドセカンド』およびアニメ『エバンゲリオン』全部のネタばれがあります。ゲーム『ペルソナ4』のネタばれも少しあります。あと、否定的な意見です。すみませんが、気分を害したくない方は読まないでください。






なんだろう。レンタルしてみたものの、なんか、非常に読みづらい。驚くほど読めない。
基本的に興味があり、読むつもりがあるからこそレンタルするのだけど、読み始めてみてから、ここまで読み進める気力が持たない漫画は「苺ましまろ」以来だ。
前にレンタルした学園エバもの漫画の「鋼鉄のガールフレンドセカンド」は絵柄は若干洗練されてなかったものの、結構面白かったのに……

というわけで、今日は新作映画は全くみてないくせにエヴァを語るぜ。
貞元エバは読んでるけど、アニメ版はもう十年見てないので細かい所はうろ覚えなんだぜ。

エヴァ」って、不安定な世界観、エキセントリックな人物像だったから魅力的だったんだと思うのです。
とくに、最初のアニメ版のセカイには、誰一人大人が居なかった。ミサト、加治、リツコあたりの「若造」はもちろん、ゲンドウも冬月も、キールローレンツ議長も、碇ユイでさえ、自分の都合しか考えてない子どもだった。

このエバには大人の登場人物がいないってのは、自分が中高生で、シンジに近い歳で、アニメ版見てたときには分かんなかった感覚でした。
これはトミノ御大とかが放送当時からいってましたけど、十五年前にはまるでわからなかった。あの頃は漠然と歳を取れば自然に大人になっていくと思ってたから。
でも気がついてみたら、ミサトさんの歳を越えて見てから、『あれ、ミサトさんも加治さんも、全然大人でなくねえか』と思えるようになってきた。
ペルソナ4の最後のほうで、ヒロイン候補の一人の雪子が『自分のことしか考えずに、環境に不満があっても何もしないような人は、年齢や経験に関わらずただの子供じゃないか』と啖呵をきるのですが、あのアニメ版ってみんなそんな人ばかりで、ただそれが実感できるのって、歳くってからだなあ、と。
自分が高校生の頃は歳をくえば加治さんみたいな大人の男になれると思ってましたからね。いま加治さんの設定年齢と同じ歳に実際見ると、あんな全面的に無責任なやつにまるで大人成分を感じないわけですけど。

この「碇シンジ育成計画」も、前に読んだ「鋼鉄のガールフレンド」も、シンジ・アスカ・レイの三角関係+カヲルみたいな人間関係がメインに据え付けられていて、アスカなんて今風のツンデレな性格付けがされているわけですが、アニメ版では、レイはもちろん、シンジにしてもアスカにしても、基本的に自分のことしか考えてなかった、自分にとって都合の良い相手だけを望んで、求めていたんだと思うのです。だから、まあ、あんな話で終わるわけなんですけど。要するに、アスカってもともとは、別にツンデレキャラだったわけじゃなくて、本当に自分のことだけで一杯一杯で、主人公にまでは関心が届かない女の子だったんだと思うわけです。

で、そこを現代、学園ラブコメ漫画にするにあたって、そのままだと殺伐としすぎているので、アスカはツンデレに、レイは内気だったり秘密を持った女の子へと、アレンジが加わるわけですけども、「鋼鉄のガールフレンド」には世界観に不安定さが残っていたんですね。それは「大人になる」ということです。仲良く暮らしていた学校のなかで、成長するに従って変わって行かざるをえない人間関係と、成熟するに従って落ちていくエヴァとのシンクロ率。結局、エピソードは仲良し主人公たちが、みんなバラバラに散らばっていく結末、大人になってしまったレイが「私はこれから何をして生きていけばいいの?」と悩むという後日譚で終わるのですけども、これはこれで「大人がいない」エヴァの二次創作としてはなかなか良い回答と思いました。

それに対して、この「碇シンジ育成計画」は……あまりに作品セカイが安定しすぎている。
学園エヴァの世界観から破綻なく原作エヴァの世界に話を寄せていくんですけども、マイルドで優しい人間関係とあまり内面とか葛藤を感じさせないキャラクターたちで綴られるエヴァはあまりに退屈で……いや、わからんよ。これ、まだ9巻目ぐらいまで出てるみたいだから、これから一気に壊れるのかもしれないけど。
エヴァの魅力が作品世界の異常なまでの不安定さであり、それが少年時代の、子どもの不安定さから来ているものだとすると、これはあまりに……あまりに、エヴァから遠い。
確かに姿はエバから持ってきているのに、雰囲気をなぞってるだけで魂が入ってない。
だから、どーしても読めない。読むモチベーションが保たない。