ロング・エンゲージメント

長い日曜日 (創元推理文庫)

長い日曜日 (創元推理文庫)

マチルドは第一次大戦中、ソンムの戦いの最中に処刑されたという婚約者が生きていると信じて探し続ける。だが、誤報や人違い、戦闘中の混乱、軍の機密と同じく真実を調べようとする女の出現、主人公自身の足の障害などの障害によって、捜索は難航する。


キャスト、スタッフに「アメリ」のメンバーが再集結。
ということなのですが、私は「アメリ」を見ていないので、そちらとの比較はできません。


よいところ。はまず映像。
ヒロインが住んでいる家の周辺、巨岩の切り立った海岸線と荒れる波の海、全体にセピア色の掛かった画面のかもし出す20年代のパリの町並みと市場の喧騒(お金掛かってるなー、って感じ)、泥と硝煙に汚れた塹壕陣地、戦後にそこを訪れたときの一面の野原。
戦間期を舞台とした映画は久しぶりに見たので、この辺の映像をがっちり見れて満足。


また、塹壕戦の辛さと、戦闘の痛さがいやというほど伝わってくる。
しょっぱなから、雨が降り続いて巨大な水溜りと化した塹壕陣地から始まって、機関銃弾や砲弾が飛び交う戦場は実に悲惨に描かれている。
戦車と飛行機じゃなくて、人間同士が銃で撃ち合った時代のためか、純愛映画なのかと思って見に行ったら、戦闘描写はひたすら痛そうで驚くほどだった。
もともとマチルドの婚約者が処刑される原因も、戦場で自分の手をわざと撃たせたからで、そのほか砲弾が地面をえぐり、人間を吹き飛ばしと、痛いシーンの連続はファンタジーな戦争ものとは対極にある、見ていて痛さを感じる戦場だ。


逆にちょっと見ていて辛かったこと。
なんといっても、登場人物の区別が付かないところ。
カタカナの名前だと登場人物が覚えきれないというのは、自分には無縁だと思っていたのですが、全然覚えられませんでした。
二時間二十分の映画なのですが、登場人物が多く(マチルドと婚約者、マチルドの養父母夫婦、婚約者と一緒に死刑となった兵士が4人、それぞれの妻だの恋人だの、死刑になった兵士を撃った伍長、そこに居合わせた士官、調達係り、マチルドの雇った探偵とマチルドの弁護士、郵便配達人などなど)、しかも皆似たような人相をしているため(兵士は当然全員フランス軍の軍服を着ており、中年以上の男はほぼ全員口ひげを蓄えている)見ていて誰が誰だかわからなくなることが頻発しました。


また、ストーリーの進展がかなりまったりとしていること。
ヒロインは婚約者の捜索のために探偵を雇い、自分でも何度か出かけるのですが、基本的には一回でかけるたびに自宅に戻ってきます。
このため、1.情報を知っているであろう人物を発見しようとする。2.その人物を発見して話を聞く。3.家に帰ってきて家族に相談したりする。4.次の情報を知っている人物を探す〜というシーケンスの繰り返しで、若干あきました。


おまけとしては、フランスの第一次大戦中の人名地名は、あんまり馴染みがないんだよなー、と。
ポワンカレとか、ペタン、ソンムやヴェルダンなんて言われたって、もうちょっと説明されないとピンと来ないのです。


一緒にやってた「エターナル・サンシャイン」の方が良かったかなあ。