古い方のエントリ(普通)


「思考実験」の続き:なぜ「強姦」は禁止で「殺人」は禁止でないのか?
http://blogs.itmedia.co.jp/pina/2006/07/post_7bcd.html


まさかトラックバックが着いてるとは思わなかったなあ。
前回、嵐のようなコメントにちゃんと対応していたので、おおっと思っていたが、
やっぱり、ちゃんと物事を集束して、消化して次の話題までふるっていうのは、
しっかりした人だと思う。

もし、今回多く出た意見のように「ゲームの内容は少年少女に悪影響を及ぼさない」のであれば、「禁止表現」を指定し規制をする必要はないということになります。もし、CEROの自主規制が根拠なく行われているのであれば、法律の制定どころかこの自主規制さえ必要なく、CEROに対して禁止の解除を求めるべしということになりますが、この点について、参加各位はどう考えられるでしょうか。


あー、私は「ゲームの内容は少年少女に悪影響を及ぼさない」とは思いません。
残酷なゲームの流行→凶悪犯罪の大量発生という図式は正しくない、というだけです。
高校教師を見て高校生と純愛してみたいと思うおじさんと同じくらいの割合で、
銃を撃つゲームをやって実物を撃ってみたいと思う少年少女はいるでしょう。


しかし、いくらおじさんが青少年に対する破廉恥行為で捕まっても、
「10歳以上年齢の離れた男女の恋愛を表現したドラマは禁止すべきだ」というような
意見はあまり一般的ではないと思います。


現実とフィクションの区別が付かない人は大人でも子供でも一定数いますが、
大人は自分の回りをみて、「実際に実行する奴なんて、まずいない」と思うわけです。
子供だって、大人と同じくらいには現実とフィクションの区別はしています。
そうでなけりゃ、少年ジャンプを読んで今のアニメなんて見てられません。


レーティング制度は犯罪を抑止するために存在するのではなく、
レゴに「対象年齢6歳以上、9歳以上、12歳以上」という注意書きがある様に、
「どのくらいの年齢になったら、その問題をゲームとして楽しめるか」と、
いったことを表現しているにすぎないと思います。


たとえば男女の微妙な機微とかマフィアの抗争とかは小学生向けじゃないですし、
「中学でのいじめ問題」を中学生に遊ばせるのはちょっと厳しいでしょう。
心身の成長度合いに応じて、対象年齢を示すものは必要だとおもいます。
だから、私は青少年に対するレーティング制度自体には賛成ですが、
レーティング制度が仮になかったとしても、犯罪が目覚ましく増える訳ではないと
思っています。

ゲームは少年少女のものではない


しかし、そもそもブログの主の認識には現実とのずれがあると思います。
「コンピュータゲームをやっているのは少年少女ではない」のでは?


http://www.computernews.com/DailyNews/2004/12/2004121512408FAC90F22020.htm


上記は、PlaystationPortableNintendoDSを購入した年齢層であり、
実際には両親が子供のために買っている場合も多いでしょうが、
実経験からいっても熱心にゲームをやっているのは、20代から30代のユーザです。
今回、思考実験に対してコメントしたゲーマーも、ほとんど20代以上でしょう。
これが、ゲーム業界が置かれている厳しい現実なんですが、それはまた別のお話。


どうもブログ主は「ゲーム中の残酷描写を規制する」ことを、
コロコロコミックや、かいけつゾロリでの残酷描写を規制する」ようなニュアンスで、
発言されているように見受けられますが、実際にはそうではなく、
「プレイボーイのグラビアや、名探偵モンクでの殺人事件を規制する」ように、
大多数のゲーマーには感じられるのです。

「強姦」は禁止で、「殺人」はなぜ禁止できないのか


まず「殺人」ではなく「コンセプト上必然性のある殺人」が禁止でないだけです。
テーマ・コンセプト上必然性の無い大量殺人は禁止されています。
さらに「強姦は禁止」なのではなく、「近親姦の表現、強姦を肯定する表現」が禁止なのです。
ドラマ「ER」には未成年がレイプされて云々〜というエピソードがよく登場しますが、
基本的にはすべてアメリカの病巣として、否定的に表現されています。


この点はトラックバック元のタイトルだけだとミスリードになる気がします。
『なぜ「強姦を肯定する表現」は禁止で、「コンセプト上必然性のある殺人」がなぜ禁止できないのか?』
がCERO倫理規定からして正しい疑問文ではないでしょうか?


なんか、疑問文を直した瞬間にそりゃそうだよなあ、と思いますが。
一応、疑問に対する答えを。


ゲームのメインユーザは、小学生低学年ではなく、大学生から中堅までの社会人です。
ゲームと比べられる娯楽は、「コロコロコミック」ではなくて、大人向けのドラマや小説であり映画であり青年漫画であり深夜アニメやOVAです。


それらから、「コンセプト上必然性のある殺人」を禁止することはできますか?
例えば、確かに殺人がなくてもすばらしいドラマは数多くあります。
王様のレストラン」にだって、「合い言葉は勇気」にだって殺人はでてきませんでした。
しかし、「ER」名探偵モンク」や「踊る大捜査線」「HERO」「古畑任三郎」から殺人をすべて禁止できますか? 「大河ドラマ」や「水戸黄門」だって駄目でしょう。 日本のドラマには戦争ものは少ないですが、そういう制約があれば8月15日のドラマも作れないでしょう。


それで犯罪の温床が一つなくなる、というのは立派な意見ですが、
とうてい賛成できる主張ではありません。