黒と茶の幻想(上)

黒と茶の幻想 (上) (講談社文庫)

黒と茶の幻想 (上) (講談社文庫)

上巻まで読了。
昔大学で友人同士だった三十代後半の四人の男女が屋久島を旅しながら、過去にあった謎な出来事を語り合っていく、という形式のミステリ小説。それぞれの回想は、大学時代に、高校時代にさかのぼり、不明確だった記憶を互いに補いながら、腑に落ちないでいた出来事の本当の姿を暴いていく。そんな話。

登場人物の姉が怖い。サブキャラなのに、やはり恩田陸の書く怖い女性は怖い。自分の弟が大事なものは片っ端から奪っていこうという姿勢は「腐り姫」の樹里みたいだ。が、明らかに一線を越えてる樹里と違って、普段は普通の人の顔をして境界線上を平然と歩いているところがもっと怖い。

しかし、恩田陸がこんなに直球セクシャルな話を書くとは思ってなかったので、びっくり。いや、描写的には全然直球じゃないんですが、これまで男女関係については「ほのめかし」のレベルが限界だったような気がするので、最後近くの展開には驚きました。
その辺までは、三十代後半じゃなくて、二十代後半くらいの年齢設定でもいいんじゃないか、と思いつつ読んでたんですが、確かに大学卒業後五年やそこらじゃ、こんな話はしないだろうな。……たぶん、大学卒業から十五年たって、アレコレと時効になってるのもポイントの一つなんだろうな。