EGコンバット

E.G.コンバット (電撃文庫 あ 8-1)

E.G.コンバット (電撃文庫 あ 8-1)

イリヤの空、UFOの夏<その1>」から1年。一周回ってデビュー作へ。
デビュー作の時点で、すでに作風が固まっているように見えるのはきのせいか。原作、原案、よしみる、著、秋山瑞人よしみるって、オーなんとかというラノベの挿絵やってた記憶しかないんだが、どこまで原案者の粗筋で、どっから筆者の趣味なんだ、この話。
内表紙によると、本書は「SFコミカルストーリー」らしいが、いつの間に「コミカル」という言葉はこんな凄惨な物語を指すようになったのか。

21世紀中盤に突如出現した「人類の敵」との戦いが始まって40年弱。人類は5億人を残すまでに減少していた。そして、その絶望的な戦いはまだ続いている。幾人かの英雄を作りながら。……完膚無きまでにガンパレードマーチやんか、とは思うが、一応こっちの方が古い、らしい。読んでて、ガンパレっぽいけど、この月の訓練校での描写はどっちかっていうと、「エンダーのゲーム」か「エンダーズシャドウ」だなあ。と思った。

こまこまとした部分の描写は筆者の趣味が満載であり、戦争しか知らない二十代の女の子の素顔に萌えるという物語になっている。もうちょっとラノベの主要読者層にアピールする「中学生の男子」を主人公に据えることができるようになったことが、デビューから「ミナミノミナミノ」までに変わった唯一のことなんだろうか、と思ったり思わなかったりした。

結論をいうと、ストーリーラインにヤマもなくオチもなくイミもない話なので、小説としてもSF小説としてもさほど面白くはないが、細々とした部分に原型に近い筆者の趣味が充ち満ちているので、そうしたところで秋山瑞人エッセンスを味わうにはいい本だと思った。個人的には冒頭の月へいくまでの1場面が結構すきだ。