千年女優

千年女優 [DVD]

千年女優 [DVD]


90分のアニメーション。今敏監督作品。
今敏監督作品は東京ゴッドファーザーズ妄想代理人千年女優の順番に見ました。PerfectBlueは見てないです。


東京ゴッドファーザーズを見た後ですぐに妄想代理人を借りたんですが、妄想代理人は面白かったものの非常にエピソードが入り組んで話だったんで、ずっと気後れがして千年女優は見てなかったんです。
おそるおそる見始めて、最初の五分くらいの間は「やっぱり見てて疲れそうな映画だなあ」と思っていたんですが、主演女優藤原千代子へのインタビューが始まったあとはどんどんと作中に引き込まれて、一気に見てしまいました。


(おそらく大船の)撮影所の取り壊し風景をあとにして、30年前に引退した女優にインタビューに向かう零細番組作成会社の社長とカメラマン。
「昔どんなに美人だったからといって、30年たったらバアサンでしょう」
やる気のない若いカメラマンと、女優の猛烈なファンである壮年社長。
山奥の小さな家で二人を迎える白髪の藤原千代子。
そして、彼女は自分の前半生を語り始める。


戦前に大店の娘として生まれ、女学生時代に国策映画で女優にならないかと誘いを受けたこと。自宅の蔵に傷ついた若い反政府活動家をかくまったこと。いつか二人で彼の故郷へ行こうと約束したこと。
だが、彼は特高に追われて蔵から逃げていってしまう。千代子は彼が落とした真鍮の鍵を手に駅へ走るが、彼の乗る列車には間に合わず、列車はホームを出てしまう。
「いつかきっと、あなたに会いに行きます」
ホームで立ち上がり、叫ぶ千代子。
そこで社長が曰く。
「いいですね。私はこのシーンで53回泣いたんです」
「えっ? どこから映画の話なん?」


女優の回想は途中から映画のなかの物語と現実が入り交じっていく。
女優本人と、熱心なファンである社長はどこまでが実話でどこからが回想なのか分かって喋っているように見えるが、若いカメラマンと同じ視点から見ている側からすると、どこまでが現実でどこからが映画のなかの話なのか分からない。


活動家を追って満州へ渡ったあとの国策映画、戦国もの、忍者もの、幕末もの、大正ロマンを通り過ぎて、太平洋戦争もの、戦後の家族もの、学園もの、自身の結婚、怪獣映画、そして失踪と映画界への復帰、SF映画と再度の失踪。


たしかにめまぐるしく舞台立てが変わっていくのだけれど、意外と見やすかったのは全部藤原千代子が主演女優として一本道のストーリーになっているからかなあ。妄想代理人みたいにあっちこっちへ視点移動しないから。


複雑な手法で単純なストーリーを描く、ってタイプの映画で、全編回想シーンなせいもあって妄想代理人東京ゴッドファーザーズと比べてコミカルなシーンも多く、面白かったです。