三国同盟の没落
熱砂の死闘
ムーンブルグ半島を制圧したローレシア・サマルトリア軍は、ルプガナを目指した作戦を開始した。
行軍の容易さからいえば、ルプガナまでの長距離を遠征するよりも、海路アレフガルドを目指した方が容易なのだが、大灯台のルプガナ海軍が強力であったため、両国は制海権を奪回することができなかったのである。
当初の戦争目的通り、ローレシア大陸へ侵攻してきていたアレフガルド軍を追い払い、占領されていたムーンブルグを奪回することに成功したため、ローレシアもサマルトリアもここで講和することを考えていた。
そうはならなかったのは、前線の指揮官だったローレシア王子たちが暴走したためである。実際に各地を転戦した彼らは、敵軍に対する憎しみが根深く、独自にムーンブルグ国境を越えて、反攻作戦を始めてしまった。
対するルプガナ・アレフガルド・ベラヌール軍には、すでに大規模な戦略にうってでる資金が残っていなかった。もともと、彼らの主目的は、北半球での通商路の確保であり、戦争の継続ではなかった。
このため、両軍はムーンブルグとルプガナの間にある巨大な砂漠地帯を戦場として長期戦を演じることになったのである。
後に残った戦史では、ローレシアの遠征は一度でルプガナに到達したことになっているが、実際にはムーンペタから長く伸びきった補給路は脆弱であり、ベラヌール軍の頑強な抵抗もあって、遠征は難航した。
ローレシアでも厭戦ムードが蔓延し、あと一歩で戦争はここで終わっていただろう。
ルプガナ軍の潰走
だが、戦況がついに大きく変わってしまった。
ルプガナ軍はその主力を大灯台に置いていたため、アレフガルドやベラヌール軍とくらべて脆弱であった。純粋な国力においても、集権国家であるアレフガルドや広大な植民地を持つベラヌールとくらべて劣っていた。
とはいえ、長らく強力なベラヌールがルプガナ軍を支えていたし、ローレシア・サマルトリア軍の方も、サマルトリア軍が圧倒的に弱体であったため、同様の欠陥を抱えていたので、長らく互角の戦いになっていた。
だが、ローレシア軍の力任せの波状攻撃の前に、ついにルプガナ軍は潰走した。それまで奮戦し続けていたベラヌール軍も、戦線を支えることができずに後退し、ローレシア軍はついにルプガナの国土への侵攻に成功したのである。
こうなると、もともと通商国家であるルプガナには戦争を続ける意欲がなかった。彼らはベラヌールやアレフガルドに無断で従来の指導者層をすげ替え、ローレシア軍に全面的に降伏してしまったのである。
こうして本土が占領された後も、大灯台のルプガナ海軍は抵抗を続けていたが、本土のルプガナ海軍はローレシア軍に協力したことで、ついに開戦以来一貫してベラヌール側にあった制海権がローレシア・サマルトリア軍にも渡ってしまった。
アレフガルドの降伏
アレフガルド軍はもともと、ルプガナやベラヌールにくらべて戦意が低かった。同盟の関係上、戦線を並べいただけだった。
そのため、ルプガナを占領したローレシア軍が、アレフガルドの西岸に上陸すると即座に降伏した。国王ラルス19世は隠居し、恭順服従の姿勢をとった。
アレフガルド国内では、ラダトームの力が弱まったことで、竜王の孫がその支配権を再度確立し、ラダトーム城近くまで勢力を伸ばした。このため、全国的に力の弱い魔物も闊歩するようになった。
大灯台に、ルプガナ・ベラヌール軍の最後の戦力が集結していたが、アレフガルドの降伏後、ローレシア・サマルトリア軍はこれを攻撃し、長期にわたる戦いのすえに攻略に成功した。